「人と同じことはしない」で新たな市場をつくる

斎藤:会社の規模を広げてこられた後、あわや倒産というピンチに直面して、それをどうやって切り抜けられたんですか。

大山:倒産の危機に直面したとき、私は考えました。いかなる時代、環境においても、利益を出せる仕組みを確立しなくてはならないと。つまり、不況時でも儲かる会社にしたい。そのためには、「人と同じことはしない」ということなんです。同じことをしていると、好況のときはみんな売れますが、不況になるとみんな一斉に売れなくなってしまいます。すると、業界ごとダメになってしまうんです。

 それを避けるには、競争のない世界でビジネスをする。これが、ベンチャー企業に大事なことだと思うんです。大企業と同じことをやって勝てるはずはありません。大企業の便利屋になるならそれでいいかもしれませんが、せっかくベンチャーを起業したのなら、違う土俵で戦うべきではないでしょうか。

 特に、当時作っていたブイや育苗箱のような産業資材は、景気の波の影響を受けやすい。しかも、零細な企業は大手より影響が大きくなる。技術で一番だ、シェアで一番だと言ったところで、大きな波が来れば、業界全体が低迷してしまうのです。

斎藤:確かに。しかし、どうやって競争のない市場を見つければよいのでしょうか。

 売り手側の視点に立つ「プロダクトアウト」の考え方では、大企業に勝てませんし、同業での競争になります。「マーケットイン」の考え方で売っても、これは買い手の視点に立つ発想ですから、結局高いか安いかという価格競争になってしまうので利益を出しにくくなる。

 そこで、生み出したのが「ユーザーイン」という発想です。

 生活者の目線に立って生活に必要とされるもの、不足しているもの、不満と思われているものを探し出して、商品を作ったり、改良したりするんです。それでこれまでにない、まったく新しい需要を生み出そうと思ったのです。

「ユーザーイン」の視点で、競争のない新市場を切り開く

斎藤:「ユーザーイン」の考え方からどんな商品が生まれたのでしょうか?

大山:当社の生きる道を探そうと、日本のメーカー140万社を徹底的に調べ上げ、たどり着いたのが園芸用品でした。まだ盆栽や家庭菜園しかなかった時代に、草花を家の中に持ち込む「ガーデニング」という新たな市場を創造していきました。

 ユーザーインの実現には、ほかにもカベがありました。商品流通です。

 当時、一般的だったのは、メーカーがいて問屋がいて、小売りがいて消費者がいるという流れです。しかし、当社が全く新しく開発する商品はどれだけ売れるか未知数ですから、問屋はあまり仕入れたがらない。それがブレーキになって、当社が売りたい商品を市場に効率的に流通させることができないんです。

 このカベを越えるにはどうすればよいかと考え、ホームセンターと直接取引を始めました。そのときから20年くらいかけて、メーカーが問屋機能を自社内に持つ「メーカーベンダー」という新たな業態を確立してきたのです。

身の丈に合った努力で熱意を継続する

斎藤:ベンチャー経営者と接していると、経営者になってからの期間が長くなればなるほど、創業時に持っていた熱を保ち続けることはすごく難しいという話をよく聞きます。メンタル面で苦しい時、つらい時もあったと思いますが、何を信念にして乗り切ってこられたのですか?

大山:あまり高すぎる志を持たないことだと思います。一歩ずつ、着実に進んでいけば、そんなに自分にプレッシャーは掛からないんですよ。

 身の丈に合ったところで努力をする。その努力を積み重ねて目標とする山に登り、その山の頂上に立ったら、目線が上がったところで周囲を眺めてみて自分の能力に応じた次の山を目指していく。そうやって成長を続け、志を継続させることが大切なんです。

 ですから、19~22歳のときはとにかく働きましたが、それを苦労とは思いませんでした。仕事はかける時間と付加価値が比例します。商品1個分の時間をかければ、1個分の成果が生まれる。そうやって、1歩ずつ目標をクリアしていくんです。

 次回は、アイリスオーヤマの新製品開発、地方ベンチャーとしての戦い方などを伺います。

(構成:尾越まり恵、編集:日経トップリーダー
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