斎藤:ちなみにアジアでは、ほかにどんな国に関心がありますか?

ロー:私たちが特に面白いと思っているのは、シンガポールと韓国です。制度が強くて教育レベルが高い。アントレプレナーシップで非常に大切な材料は、信頼なのです。投資する人と起業家と技術を持っている人とかと、信頼し合い協力しなければならないのですから。まじめで、有言実行。それがなければ、共同で新しいプロジェクトをするのは難しい。本当にお金を当初の目的のために使っているかどうかとか、分かりづらいですから。

斎藤:そうですね。

ロー:私たちは、インテグリティーの高い国に注目しています。アジアは良くなってきています。その中で日本は一番評価できます。そのうえ、研究レベルも最も高い。大学はものすごく強い。だから、私はアジアでは日本から始めたいと考えているのです。

研究から商業化にどうつなげていくか

斎藤:ただ、日本は研究は強いんですが、これをビジネスにして、世界に持っていくところが弱いんですよね。

ロー:そう。コマーシャライゼーション(商業化)ね。

 研究することはもちろん大切です。そして、もっと研究に投資するべきです。

 一方で、大学の中の考え方を少しクリティカルに動かさなければ。MITの校訓は「メンズ・エトゥ・マヌス」です。これはラテン語で「精神と手」ということなんです。私たちはこれを、頭だけで考えるのはいいんだけれども、手で実際にやらないといけない、つまり、実際に作れないといけない、実際に世の中に入れないといけない、と捉えています。

 だから、新しいエネルギーの資源を考えるだけでは足りません。実際にエネルギーをつくれるところまでいかないと、誰の助けにもならないでしょう。コマーシャライゼーションの重要性をもっとプッシュするべきだと思います。

 日本の大学が取り組んでもいるのです。例えば東京大学はすごく強いアントレプレナーシップを応援する仕組みができつつある。ほかの大学も同じように取り組んでほしいのです。

斎藤:この記事自体が、日本では、東京だけではなくて地方のスタートアップを応援していくものなのです。東京以外でこういうイノベーションの仕組みをどう起こすかというのも、テーマなんですよね。

ロー:米国にも同じニーズがあります。各地方が、どうすれば経済レベルが向上するかということなんです。最も有効な方法は、ある一定の分野で世界一のレベルに到達することです。例えば、セントルイスはイノベーションのレベルはもともと米国内では低かった。しかし、農業の技術はすごく強い。というのは、モンサントの本社があり、たくさん農業関係の知識が集積しているからです。この分野の知識がある会社と投資家がたくさん集まっているから、広範囲から会社や資金、人材が集まってくるのです。

斎藤:なるほど。ところで、CICはスタートアップに投資はしないんですか。

ロー:我々は投資しませんよ。我々はニュートラルの立場であるべきです。私たちが投資会社だったら、ほかの投資会社の競争相手になりますから、彼らは入居しなくなる。それでは、大きなセンターをつくれませんから。

(編集:日経トップリーダー

 大阪出身の起業家、右田孝宣・「鯖や」社長が、とろさば料理専門店「SABAR」の運営で培った成功のノウハウを語る書籍『サバへの愛を語り3685万円を集めた話 クラウドファンディングで起業、成功する方法』を発売しました。
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