ロー:両者は、全く違うものなんです。

 ただ、イノベーション・センターの中にインキュベーション・センターが入っていることは珍しくないです。例えば大手企業の新規事業開発担当の部署が、我々のセンターの中にインキュベーション・センターを置いているケースがあります。

斎藤:なるほど。

ロー:なぜかというと、自社の人材だけでは新しいアイデアは入ってこないでしょう。周りにいろいろなスタートアップがいれば、いろいろな投資家もいて、いろいろな専門家がいる。そこから新しいアイデアがたくさん入ってくる。

斎藤:そうですよね。ところで、今は何社ぐらいのスタートアップが入居しているのですか?

ローCEOと聞き手の斎藤・トーマツ ベンチャーサポート統括本部長(左)

ロー:今はボストン地区で1000社ぐらいですね。

斎藤:全部スタートアップなんですか?

ロー:ただ、会社のサイズはまちまちです。一番大きな会社ではたぶん100人ぐらいです。時々200人ぐらいまで増えてしまう会社があるんですが、そうなると実は外に出た方がいい。ある程度大きくなると、交流が逆に少なくなる。我々の主なターゲットは最初の段階、1人から……。

斎藤:数人?

ロー:そう。そして、100人ぐらいまで。

アイデアの良し悪しよりも社長の人柄

斎藤:なるほど。ところで、入居を認める会社はどうやって選んでいるんですか?

ロー:昔はアイデアの質を評価しようとしていたんです。ところが、これが難しい。

 というのは、以前、フェイスブックはボストンのほとんどすべての投資家に投資を依頼しようとしたけれど、100%「NO」と拒絶されたんです。「これはおかしい」「意味が分からない」と言われたそうです。

 つまり、アイデアを評価するのは大変なのです。だから、我々はアイデアではなくて、起業家を評価する。その人の評判が良くて、いい大学出身でなくても構わないんですが、大学の教授がこの人がいいと評価しているとか、を見ています。誠実で、正直かどうか。

 もちろんアイデアをうまく説明できなければ困ります。ただ、その説明を聞いて、私たちがいいアイデアと思ってなくても大丈夫です。

斎藤:ええ!

ロー:なぜかというと、悪いアイデアに見える会社は大化けすることがあるんですよ(笑)。

斎藤:フェイスブックがそれだったということですね?

ロー:そう。斬新なアイデアをすぐに理解できる人はいません。有名なベンチャーキャピタルでも、だいたい20社に投資しても1つか、ぜいぜい2つぐらいしか成功しないのです。つまり、90%が失敗なのです。全体でその計算ができていれば大丈夫。だから、ほとんどベンチャーキャピタルはいいアイデアを選ぶというより、いい可能性を持つ会社を選ぶのです。

 例えば、フェイスブックは、当初は、同じ大学の友達をつなぐようなソフトだったですね。ただ、どうしたらお金を儲けられるかは、誰も分からなかった。けれども、便利だと創業者は考えたんです。

 もし本当に便利だったら、世界にたくさん何億人が使うかもしれないでしょう。何億人が使うのであれば何となくお金を、収入を得る可能性があるはずなんですね。そういう考え方の方がいいのです。