このほど来日した世界有数のインキュベーション組織である米ケンブリッジ・イノベーション・センター(CIC)のティモシー・ローCEO。その目的は、東京への進出を検討することだった。東京の可能性と世界のスタートアップの潮流について聞いた(聞き手は、トーマツ ベンチャーサポート事業統括本部長、斎藤祐馬氏。前回の記事はこちらをご覧ください)
斎藤:日本では大きなビルが少なかったり、オフィスの値段が高かったり、事情が海外とは違いますよね。
ロー:いや、賃料が高くても構わないのです。
斎藤:高くてもいいのですか。というと、収支モデルはどうなっているんですか?

ロー:今までの経験からすれば、オフィスのコストはいくら高くても大丈夫なのです。というのは、スタートアップには広いスペースは不要です。4~5人も入れれば十分なんですよ。数億円の投資を集めようと考えているような賢明な起業家にとって、家賃が月に5万円違うかどうかよりも、もっと大切なのは、自分のオフィスの周りに誰がいるかなのです。
これは16年間、我々が事業を続けてきて分かったことです。最も強い会社は中心的なところにオフィスを構えるのです。なぜかといえば、やはり投資が大切だから。そして、新しい会社にとっては採用が最も重要だから。創立者だけでは、会社は動きません。その周りにいい人材がいないと何もできないでしょう。
斎藤:なるほど。
次はロボティクスのラボをつくりたい
ロー:どちらかというと、大学に近い概念かもしれません。大学にいろいろな研究室があり、寮、カフェテリア、そして図書館などもある。学生は生物系ラボの機器を借りたり、電子関係のラボを使ったりすることができます。
同じように私たちのセンターには、シェアできるウエットラボ(薬品や装置などを用いる実験室)があります。数十のバイオ系スタートアップが、それを使っている。
これからはロボティクスのラボをつくる計画です。この分野のスタートアップには、やはり特別な機械が必要なんですよ。
斎藤:そうですね。
ロー:1社でこうしたラボをつくると、とてつもなく高くついてしまう。そのうえ、広いスペースも必要になる。だから、大きなロボティクスラボに様々な機械を用意しておいて、100社がシェアすれば1社あたりのコストは僅かに抑えることができる。当たり前のアイデアじゃないかと思うんだけど、何で今までやらなかったか分からない(苦笑)。
斎藤:なるほど。ただ、東京でも、小さな規模のインキュベーション・センターは点在してはいますが。
ロー:やはり規模が大切だと思います。少なくとも1000人が集まることが必要と思いますよ。そして、2000、3000人が同じ場所にいた方が強い。
小さい施設が悪いのではありません。だいたいの場合は、インキュベーション・センターになるはずです。イノベーション・センターにはなれないでしょう。
斎藤:確かにそうですね。
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