日本の大企業の中にも、CVCを通じてベンチャーに出資したり、M&Aをしたりするところが次第に出てきています。しかし、その多くは投資するタイミングが遅い。それは赤字のベンチャーをあまり買おうとしないからです。利益が出始めた後で、売上高と利益を買うために投資するという発想にとらわれているのです。

 ところが、米国のグーグルやアップル、フェイスブックといったテック企業は、創業初期のベンチャーがまだ赤字の段階でも、基礎技術が完成したり、あるいは多くのユーザーが定着していたりしたら、積極的に買収に動きます。まさに、研究開発投資そのもので、COO(最高執行責任者)というよりCTO(最高技術責任者)的な発想を基に経営を考えて、買収するか否かを判断しているわけです。

日本企業の多くは売り上げや利益を買うために利益が出る事業になってから投資をすることが多いが、米国の企業は自社に必要な技術を手に入れるために早い段階で投資をする

 日本の大企業のCTOの多くは、「研究開発本部長」的視点で、技術のことばかりに注目しています。これからのCTOには、ベンチャーの持つ技術や研究実績が、自社のビジネスとして事業化するに値するのか、自社をどう大きく伸ばすのかを見極める経営的な視点が今以上に求められます。自社に必要な技術を持つベンチャーをM&Aなどで早く手に入れ、社内で大きなビジネスに育てていくところまで発想を広げることが必要でしょう。CTOは、全社のトップであるCEO(最高経営責任者)のサポート役としてそこまで役割を持つべきです。

エース社員ほど新規事業に配置

 そうした中、KDDIでは18年4月に髙橋誠社長が就任しました。髙橋社長は、携帯電話を通じたコンテンツ配信や、ベンチャー支援の仕組みを立ち上げるなど新規事業開発畑を歩んで社長になりました。

 既存の中核事業から社長が出ることが多い日本の大企業ではたいへん珍しい例だと感じます。これからの時代は、KDDIのようにイノベーションに明るい、技術マインドのある人を経営層にもっと増やすべきではないでしょうか。

 それを実現するには、今まで本流の既存事業で成功してきたエース社員を、ベンチャーやイノベーションを担当する部門に出すべきです。そうした動きは次第に増えつつあるので、それ自体は歓迎すべきだと見ています。ただ、せっかくエース社員を新規事業などに取り組ませても、2年くらいして結果が出なかったり、赤字が続いていたりするとすぐ、新規事業の担当をやめさせてしまう会社が少なくありません。エース社員に土を付けないために、ベンチャー連携とは関係がない海外に赴任させたりするのです。

 イノベーションは新しい市場を生み出すのですから、当初は赤字が続くのが当たり前です。Jカーブを描いて一気に売り上げを伸ばすには、初期の開発結果が市場に受けいれられるまでしばらく厳しい時期が続くものです。経営トップは、「イノベーション、新規事業を絶対にモノにする」と決めたら、エースに本気で取り組ませると腹をくくって取り組むことが必要です。また、イノベーションに取り組む現場のメンバーも腹をくくって勝負を賭けるべきです。それができるのが本当のエースであり、次世代リーダーになっていく時代になったと言えます。