大企業がベンチャー企業との連携に積極的になってきた。国内外でベンチャーと大企業の連携を後押ししてきたデロイト トーマツベンチャーサポートの斎藤祐馬事業統括本部長は、大企業が外部と連携する「オープンイノベーション」に対する意識は日本において大きく進んだと見る。その一方で、斎藤氏は、日本の大企業にはまだ不足している視点がいくつかあると指摘する。変わり始めた大企業が、さらにベンチャーとの連携を深めるにはどんな視点が必要か、斎藤氏が語る。

 日本のオープンイノベーションは大きく進展してきました。2010年代初めには大企業がベンチャーの製品やサービスを見て「これならうちでもできる。外部と組む理由がよく分かりません」などと話していました。それが、この3年ほどで「自社だけではできないので、ベンチャーの力を借りたい」と誰もが言うようになり、オープンイノベーションに対する意識が大きく変わりました。

デロイト トーマツベンチャーサポートの斎藤祐馬 事業統括本部長。ピッチイベントの開催やコンサルティング、政策提言などを通じ、日本の大企業とベンチャーの連携を進めてきた(写真:菊池一郎、以下同)

 しかし、まだ解決しきれていない課題がいくつもあります。その1つが大企業の新規事業のつくり方です。

 その方法は大きく3通りあります。1つが社内の研究開発(R&D)部門から事業を立ち上げる方法、2つ目がCVC(コーポレート・ベンチャーキャピタル)を通じた出資によるベンチャーとの協業、3つ目が有力なベンチャーのM&A(合併・買収)です。海外の大企業は、目標に応じてこの3つをバランスよく使い分けています。

 対して、日本の大企業は自社のR&Dに偏重しすぎです。大企業は、社内のR&D投資額を競うばかりで、従来は社外にほとんど目が向いていませんでした。

 海外の企業は社内R&Dだけでなく、それを補完する形でCVCによるベンチャーへの出資やM&Aをするというスタンスです。つまり、社内R&Dのアウトソーシングと考えてCVCによる出資やM&Aをしているのです。

 海外企業のような動きが強まれば、ベンチャーが起業した後のイグジット(出口)は、ハードルの高いIPO(新規株式公開)だけでなく、M&Aで自社を売却するという方法も有力となり、選択肢が増えます。これは、日本のベンチャーの起業をより促し、ベンチャーのエコシステム(生態系)を活性化することにもなるのです。