ロー:カギは、どうしたらいい基盤をつくれるかですよ。
 振り返ってみれば、昔は研究者は一人で黙々と研究するものでした。ベンジャミン・フランクリンさんは、自宅の裏で空に凧を揚げて雷のエネルギーを捕まえていました。しかし、今では同じテーマに関心がある人が大学に集まって研究するというパターンが主流になっています。というのは、大学はいろいろ特別な設備があります。さらに、知識のある人がたくさんいますから。もし、フランクリンさんの周りに数百人のMITの教授がいたら、研究は飛躍的に進歩したかもしれません。

斎藤:確かにそうですね。

エジソンとベルが同じアパートに住んでいたわけ

ロー:今では、世界的にスタートアップが同じ場所に集まろうとするシフトが起きているのです。同じ場所に集まれば、もっと会社が興こしやすくなるのです。
 面白い歴史的な話を紹介しておきましょう。1876年、ボストンにある4階建てのビルは、1階が電気店でたぶん電池なんかを売っていたんでしょう。そして上の階は貸アパートだったのですが、そこに、住んでいたのは、アレクサンダー・グラハム・ベルさん。電話を発明した人です。それから、トーマス・エジソンさん。世紀の発明王ですね。

斎藤:そんな小さなビルに発明家が2人も。なぜ?

ロー:その2人は同じ人に、特許申請用のイラストを描いてもらっていたんです。電気店のカウンターにいる店番が、暇なときに絵をかいていたんです。

斎藤:そうなんですか?

ロー:電話と電球という素晴らしい発明を生み出した2人が集中するところには、知識やノウハウも集まるというわけです。当時としては、非常に重要なビルだったわけですね。

斎藤:面白いですね。

ロー:だから、我々のセンターも本当には新しい概念とは言えないのです。ベルさんとエジソンさんが暮らしていた、最初のイノベーション・センターのような概念を、単に我々が今の世代にもう少し大きな規模で作り直しているだけなのです。
 そして、東京にはこういう施設がないので、どうにかつくることができないか、と考えて東京に来ているのです。

東京にもリサーチのために来たと言っていいのですか?

ロー:検討のために来ました。例えばどういうビルであれば、こういうコンセプトが成り立つのか、経済産業省の関係者と意見交換しました。彼らは、正式的にこのアイデアを推すと言ってくれましたよ。
 実は、去年、MITで安倍総理にお目にかかりました。その場で、ケンブリッジ・イノベーション・センターの概念を、日本は大切に考えないといけないという発言があったのです。そこで、日本に来てみることにしました。きちんと成り立つかどうかを実際に自分の目で見てみることが重要ですから。

(編集:日経トップリーダー)

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