入山:僕は起業における地域性にもすごく興味があるんです。日本全国で特に起業への熱い思いや新しいことをやりたいという人たちが多い地域はありますか。

斎藤:中小企業白書2014年版によれば、沖縄は開業率が日本一なんです。「働くところがないから飲食店を開業する」みたいなイメージらしく、毎年、大学を卒業する約4000人のうち、1000人ほどが定職につかないそうです。

入山:米国でも、シリコンバレーで起業する人が多いのは、暖かいからという話があります。みんな過ごしやすいカリフォルニアが大好きだから、大企業に勤められなくてもいい、ここに住み続けたいと言って。それと似ているんじゃないかな。

 たとえば、カリフォルニア大学ロサンゼルス校は超一流大学ですが、ビジネススクールの格付け指標であるMBAランキングはそれほど高くないというのは有名な話です。ランキングはMBAを取った卒業生の給料がいかに上がるかに応じて伸びます。ニューヨークのウォールストリートでバンカーやコンサルタントになって高給を取らず、起業する卒業生ばかりだと、大学のMBAランキングも上がりにくいんです。

沖縄がシリコンバレーになる日

斎藤:イノベーションは異なる領域が接する“際(きわ)”で起きると言われていますが、沖縄にはこの“際”の最先端とでもいうべき場所があるんです。11年に学校法人として設立された、5年制で博士課程のある沖縄科学技術大学院大学(OIST)です。

 予算のほとんどが国からの補助金です。前身の沖縄科学技術研究基盤整備機構の理事長にはノーベル生理学・医学賞を受賞したシドニー・ブレナー博士を招聘しました。教員1人に対して学生2人という比率で、教育より研究に力を入れており、大学の公用語は英語。教員と学生の半分以上は外国人という環境です。数学や化学、物理など複数の分野で学際的な研究をしているようです。

聞き手の斎藤氏も、沖縄について熱く語る

 豊富な予算があり、最先端の研究を行っている若い人がたくさんいて、開業に対する抵抗のない土地柄となると、面白いビジネスの種やトレーニングの仕組みがあれば盛り上がるでしょうね。

入山:そんな大学があるんですか、沖縄に。知りませんでした。すごいですね。日本で最初にシリコンバレーのようになるのは沖縄かもしれない。外資系のユニークな企業や日本の大手企業、ある程度、軌道に乗ったベンチャー企業の拠点などができると、活性化しそうですね。

 米国では、スマートフォンからタクシー代わりに使える自家用車を探して予約する「Uber(ウーバー)」を提供するウーバー・テクノロジーズがピッツバーグ市に研究拠点を置く代わり、市側がウーバーを全面解禁したというストーリーを聞いたことがあります。真偽の確認はできない話ではありますが、もし本当であれば地域の活性化を念頭に置いた駆け引きですよね。

斎藤:日本だと、補助金よりも規制緩和の方が効きますよね。あとは世界の研究者は集まってきているので、日本の若くて優秀な人をどう集めるか。産業との接点をどう作るかです。研究施設があるだけでは、ベンチャー企業を作っても結局、お金が入ってこない仕組みになってしまいますから。