斎藤:地方には、東京にはない貴重なリソースもあるんです。その1つが「農業」です。

 佐賀県の山奥で起業したベンチャー企業があります。佐賀駅から30~40分かかり、地元の方ですら迷うような場所です(笑)。

 製造しているのは、竹炭やお茶のカテキンを使った鮮度保持剤。冷蔵庫に入れておくと3日くらいしか持たない野菜が1週間持つとか、専用装置と併用すると3週間持つといった商品です。

 周辺が農家ばかりだから、野菜を配送したいお客さんがいっぱいいる。それで、佐賀を拠点に研究を続けているんです。東京でまねしようにもできないビジネスモデルですよね。山奥という土地柄が技術そのものというか。

入山:農業関連のベンチャーは、地方にある利点ってすごく大きいですよね。

「ど田舎」こそが最大の資源になる

斎藤第2回で紹介した高知・土佐山の“起業キャンプ”も地方ならではの利点を生かしたビジネスモデルです。6カ月の起業プログラムを経て、実際にビジネスを立ち上げる「土佐山アカデミー」です。人口1000人を切った過疎の村で、小学校も中学校も閉鎖されてしまっているほど、何もないところです。

入山:あ、そこで起業するの?(笑)

斎藤:ええ。ビジネスなんか成り立たないと思うでしょう。

 面白いのは、1つの事業で何十万も稼ごうとしないんです。例えば、インバウンド(訪日外国人観光客)に部屋を貸して月5万円、同時にカフェをやって月数万円、クラウドソーシングで仕事を受けて月数万円、というふうに売り上げを積み重ねて月20万円くらい稼ぐポートフォリオを作ります。近所の人が野菜をくれたりするから、月10万円あれば家族4人で暮らせるし、月20万円も稼げればすごく裕福に生活できる。

 実際に移り住んで起業した人に話を聞いたら、「過疎だからいい」というんです。もともとは都心の高級住宅街に住んでいた方ですが、学校では1人の先生が40人の児童を指導するような状況で、子どもの教育環境としては破綻している。自然に恵まれていて、1クラスに児童が数人しかいないような村が魅力なのだそうです。

入山:へえ、面白い。僕が日本に帰ってきた最大の理由は、やっぱり日本のほうが面白いからです。起業シーンでいえば、米国はステレオタイプであまり工夫がない。シリコンバレーに行っても、ルールができ上がってしまっている印象です。日本人は大きな仕掛けを作るのが下手で、今後の課題ですけれど、単発の面白いアイデアはたくさんある。それぞれの創意工夫で思い思いのことをやる人たちというのが、これまでのお話のようにどんどん出てきていて、大きな変化が起きていますよね。