斎藤:起業の活性化でもう1つ大切なのが、大企業の意識改革です。新規事業開発の担当になるなど、起業というテーマが視野に入ったとき、起業家やベンチャー企業を育ててWin-Winの関係を築こうというマインドを持った人材を育てたい。大企業には知名度の高いブランドや全国の拠点という強力なインフラがあります。その社員という自分の立場を“利用”して起業の活性化に貢献してほしいのです。

 支援者としての大企業に必要な人材の条件は3つあります。個人的なやりがいを自社のインフラを活用した仕事に見出せること。その仕事を10年以上、続けようと腹を括っていること。そして、目的を達成するために周りを巻き込む力があることです。

「個人のミッションは考えさせない」のが日本企業

入山:ある大手企業の人事担当の人と話したとき、おっしゃっていたのが 「人材育成において、個人的なミッションやビジョンというものは、あまり考えさせないようにしている」ということでした(笑)。あくまで会社の思想だけを刷り込むのだ、と。なのに、50歳くらいで「この人、そろそろ辞めてもらおうかな」となったときに、いきなり「おい、お前、人生のビジョンは何だ」とか言うから、みんな混乱する(笑)。

斎藤:今、大企業の社員を対象に、個人的なやりがいをいかに見つけるかをノウハウ化した「原体験ワークショップ」というのをやっているんです。自分の今までの人生を棚卸しすると大体、一番つらかったときと絶好調なときに価値観のベースとなる体験がある。それを基に、自分の人生のミッションを会社の仕事の方向性とどうすり合わせるかということを考えてもらうものです。

入山:マネジメント側にとってもメリットのある研修ですよね。ある大手企業では、ベンチャー企業に社員を派遣したら、理念に共感した人たちが「大企業で働いている場合じゃない」とばんばん辞めてしまったという話を聞きました(笑)。こうした人材の流出を防ぐことにもなるわけですから。 

斎藤:「自分のミッションは、会社を利用したほうが実現しやすいんだ」という考えに持っていくのが、マネジメントのポイントですよね。「小さくても自分で事業をやりたい」とか「自分の手でお金を儲けたい」となると、辞めて起業する方向に向かってしまう。でも、「世の中にインパクトを与えたい」「個人ではできないような大きな仕事をしたい」となれば辞めないし、続けているうちに共感する人も増えてくる。時間がかかっても形になる可能性が高いですから。