高野:そうなんです。だから、うちは儲けを重視せずに行こうと思うんです。生きていくために仕事はしたいけど、幸いなことに僕自身はあまり物欲もない。儲けたお金は次の研究開発に全部投資したいと思っています。いまある「Bubble90」は業務用だけですが、派生モデルの開発に取り組んでいきたいと思っています。

 例えば節水型のシャワーができれば、一般家庭や美容室に売れるようになりますし、洗車用のノズルができれば、ガソリンスタンドや洗車サービスの企業にも売れるようになる。そういった派生モデルを手がけながら、一方でまったく別の技術を開発していくために、今年からプロジェクトチームを組んでとりかかっているところです。

水を球状にして洗浄力アップ

斎藤:Bubble90という製品は、他の製品や技術とどこが違うのですか?

高野:この製品は、真ん中の穴から空気を吸い込んで、それで周りの穴から水と空気を混合したものを出します。そのときに、その水と空気を混合した流体が管の中を通るだけで小さくちぎれて球状になる。これがうちの世界初の技術です。この技術で水を脈動させて洗浄力を出すので、水圧は通常の蛇口よりも高いくらいです。

 似たような技術だと、トイレの温水洗浄ノズルや、半導体の洗浄装置などに使われる脈動ポンプと呼ばれるものがありますが、こちらは電気で弁を開閉して断続的に水を出す仕組みで、中に可動部があります。

斎藤:その分、やや壊れやすい面があるのでしょうか。

高野:ええ。それに対して、Bubble90は可動部がありませんから、メンテナンスも不要です。

Bubble90を通すと、水流が球状になる。この球がぶつかることで少ない水でも洗浄力が高くなる

斎藤:(Bubble90の実演VTRを見ながら)水流が球になるのは、本当に不思議ですよね。

高野:この流体をちぎって球にする技術は、節水のほかにもいろいろ応用が利きます。例えば菓子メーカーからつぶつぶのアイスクリームが作れるんじゃないかとか、水と気体がうまく混ざるので液体調味料にスモークで香り付けができるのではないかとか、いろいろなお問い合わせをいただいています。開発依頼もたくさん来ていまして、作れば売れることもわかっているんですけど、忙しすぎて今はとても手が出せません。

斎藤:なるほど。我々がベンチャー企業を見るときには、この会社が存在すると、その前後で、世の中にどれだけインパクトがあり、何が変わるかを考えます。個人の仕事が家業になって、家業から企業に成長していく、そのプロセスでこれからこの技術はいろいろ応用されていくのですね。

高野:実は、東大阪にあるうちの父の工場は今でも継いでいなくて、父がガスコックの生産を続けています。事業を継承したわけでなく、技術を継承したという形なんです。技術を継承して今の時代に合った製品を作って、僕は節水器具の製造、父親はガスコックの製造をそれぞれ別々の会社でやっています。