斎藤:1億円までいった累積損失を埋め合わせ、売り上げも利益もプラスに向かっているわけですが、次の課題はどんなものでしょうか。

高野:この先、飛躍するためにどうすべきかと考えたときに、そこで初めて企業理念が必要だということに気づいたんです。それまでは他社のホームページで企業理念などを見ていても、「そんなこと本当は思ってないだろう」なんてちょっとバカにしていたんです。でもこの段階にきて初めてそれが必要だということが分かりました。

企業理念が会社を強くする

斎藤:それはどうしてなんでしょう。なぜ企業理念が必要だと。

高野:今まで、僕は社員にずっとお金の話ばかりをしてきた。いくら払うから来てほしいとか、いくら売ればインセンティブを支払うとか。お客さんに対しても、これを取り付けたら何カ月で回収できますよ、あとは利益ですよと、お金の話しかしていなかった。

 そうすると、すべてお金の付き合いになるんですよ。ものすごくドライ。社員たちが、隣の人が困っていても一切助けないんですよ。最初の頃は会社といっても契約だし、そんなものかと思っていました。

 でも、この会社のことが好きだとか、この会社のやっていることは社会貢献になると考えて、そういうところで働きたい、僕の考えに共感してくれて一緒に働きたいと言ってくれる人たちが入社してくるようになって見方が変わってきました。

斎藤:どんなことに気付いたのですか?

高野:そうした人たちのモチベーションってものすごく高いんですね。今考えると、お金だけの雇用関係って全然モチベーションが低い。会社全体の士気が高まれば、もっと強い組織になっていくということが分かったんです。

 少し前に『がっちりマンデー!!』というテレビ番組に出たら、ファンレターが何通か届いたんです。「節水や『もったいない』という精神は大事です。すごく感動しました」とか「御社を応援します」みたいな内容が書かれてあった。

 僕はこれまで、特に社会貢献を考えてこの仕事をやってきたわけではなかったのですが、そういうとらえ方をしてくれる人もいるんだと気づいた。だから、もっとDG TAKANOのカラーを打ち出して、どんどんファンを増やしていかなければいけないと思ったんです。

 そのときに、うちのカラーとは何なのかと自問しました。そこで、単なる節水ノズルの会社じゃだめで、何を目的とした組織なのかを決めなきゃいけない。そのときに初めて理念が必要だと気づいたんです。

次回は、節水ノズルという製品に対する思いや、世界に打って出るための体制づくりについて聞きます。

(構成:藤野太一)

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