斎藤:どうやってそのピンチを切り抜けられたんですか。

高野:東京に面白いベンチャーの社長がいると弁護士の先生から紹介してもらったんです。年齢は私と同じくらいでしたが、不動産関連の事業で好調な業績を上げているバリバリの社長でした。経営していた居酒屋で試してもらえるという話になり、店の蛇口全てにBubble90をつけてみたんです。そうしたら、1カ月当たり17万円だった水道料金が6万円台にまで落ちた。明細を見たビルのオーナーがびっくりして店に飛んできたらしいです。「お客さんが来なくなって店がつぶれるのかと思った」と(笑)。

 この経験をして、企業に売りに行くのではなく、ターゲットは飲食店だと気づいたんです。そこで、その社長と共同で14年春に販売会社を設立して、飲食店系の展示会に片っ端から出るなどして二人三脚で頑張りました。飲食店を数店舗経営しているオーナーに1店舗分を無料で取り付けてとりあえず試してもらう。そうするとまた同じことが起きるわけです。しかも温水の蛇口に付けると温水の使用量が減ってガス代も下がるんですね。

Bubble90は蛇口に取り付けると約9割の節水ができる

飲食店を狙い、コスト削減を強調

斎藤:なるほど。水道代だけでなく、ガス代も節約できる。

高野:はい。水道光熱費をまとめて減らせると、またオーナーがびっくりされて、すぐに全店舗入れてほしいという話になる。それまでは価格を安くしてもまったく売れなかったものが、適正な価格でも着実に売れるようになりました。

 そこから1年で売り上げは一気に約20倍になり、ようやく社員を雇える体制になりました。

 多くの飲食店が導入して3カ月から半年程度でコストを回収できているので、販売店からはもっと高くても売れると言われますが、あまり高くするとうさんくさい“節水グッズ”の会社と同じになってしまいますから(笑)。

斎藤:売り上げが急に20倍になったら営業体制を整えるのも大変です。人材採用はうまくいったのでしょうか。

高野:それが困ったことに、ITベンチャーと違って、“町工場”ベンチャーは人気がないんです。募集をかけてもまったく応募がない。たまに来るのは、いかに楽をして給料をもらえるかみたいなことしか考えていない人たちなんですね。それでも、応募してきた人はとりあえず採用したのですが、やはり工場の雰囲気がどんどんおかしくなる。入社してくれた人には、よくうちに来てくれた、一緒に頑張っていこう、会社を大きくできれば、みんなにももっといい待遇ができるし、給料も上げられるからと、理想を語っていたんですけど、現実は全然そんなことなくて、本当はすごくショックで心がすさみました。

 ちょうどその頃に東京に来て、トーマツ ベンチャーサポートさんの「Morning Pitch」でプレゼンをさせてもらう機会があったんです。朝の7時スタートって、東京ってこんな時間から仕事をしているのかって衝撃的でしたけど。

斎藤:確かに、そうでしょうね(笑)。

高野:ただ、こうしたプレゼンの場に参加していると知名度がだんだん上がってくる。会社の知名度を上げて、ブランド価値を上げて、この会社で働きたいと思う人を増やしていかないとだめだと思って、それからできるだけコンテストなどにも出るようにしたんです。

 そうしたら、採用に応募してくれる人が1回目より2回目、2回目より3回目と目に見えて変わってきて、だんだん意識の高い人たちが来るようになったんです。そのうち、家電メーカーの部長をしていた人が来てくれて、今でも大活躍しています。

 そういう状況になると、やる気のないメンバーは会社にいづらくなるんですね。最初に採用したメンバーが抜けると、だんだん会社が健康な状態になっていくわけです。今は女性社員が多くて7割くらいいます。