家業に魅力を感じなかった

高野:東大阪って、いいときは1万社を超えるような工場がありましたが、もう6000社台になっている。倒産、廃業をたくさん見てきました。医者の息子が医者になるとか、親の職業を継ぐことは多いと思いますが、町工場の息子は町工場を継がないんですね。

 それは、やはり町工場に魅力を感じてないんですよ。食べていくのも大変だし、嫁の来手もないし、自分の代で終わりだというケースがたくさんある。これからもそれはどんどん続いていくと思います。

 僕もそのうちの1人で、町工場にまったく魅力を感じていなかった。世界最高レベルの切削加工技術を持っている工場が家業なのに、それにまったく魅力を感じていなかったわけですよ。

斎藤:それが、節水ノズルを作り始めたのはどうしてですか。

高野:会社員もやりたくなくて、学生のときから起業したいという思いがずっとあったんです。それで、大学を出て周りが大手の企業に行く中、自分1人はITのベンチャー企業に入りました。

 3年間、営業を経験したあと、独立の準備を進めて、それからITの会社をつくりました。だからその時点でも、まだ工場を継ぐつもりはありませんでした。そこで、たまたま最初に来た仕事が、ある節水製品をインターネットで販売したいというもので、それが1つ数万円もするんです。工場育ちですから商品の製造原価はだいたい分かる。ウチで作れば、もっといいモノがずっと安く作れると思って、節水製品に関する市場のことを調べてみたんです。

 そうすると大企業が1社も参入しておらず、無名の中小企業ばかり。しかも環境系の会社が多くて、ものづくり系の企業が参入していないので工業製品としてのレベルが高くない。これならいいものを作れば1番になれると思ったんですね。

斎藤事業統括本部長(奥)と高野社長

斎藤:いきなり新規参入しようというからには、節水製品はもちろん、水を取り巻く世界的な状況にも注目をされたのでしょうか。

高野:日本は、たまたま水資源が豊富にありますが、世界中のいたるところで水不足が起きています。それに、日本は水が豊富なように見えますが、肉などを輸入しているから全ての食料を自給自足しようとすると、日本も水不足になるんです。牛を育てるためには莫大な水が必要で、餌にするトウモロコシも必要になる。そのトウモロコシを育てるために必要な水などを考えると、牛肉を輸入することは、すなわち莫大な水を輸入しているのと同じことなんです。

 そうした視点を持つと、北米も南米もアジアもヨーロッパもアフリカもみんな水が足りない。それは世界中でますます深刻になっていく。だから節水には非常に高い需要があると気付いて、これはチャレンジする価値があるということで、父の工場にこもって1人で試作を始めたんです。