“節水グッズ”と呼ばれる製品は数多く存在する。東大阪市にある金属加工ベンチャー、DG TAKANOの高野雅彰社長は、あるとき手にした節水製品を見て、「この程度の性能のものが、こんなに高く売れるのか」と驚き、「うちなら、もっといい製品ができる」と、新たに、蛇口に取り付ける「節水ノズル」の開発に取り組んだ。独学で構造を考え、あらゆる特許を見直し、開発に成功した「Bubble90」は、約9割の水を削減できる性能によって、今や日本のみならず世界の注目を集める。世界的な課題である水不足に商機を見出した高野社長に、今後の展望を聞く(聞き手は、トーマツ ベンチャーサポートの斎藤祐馬事業統括本部長、前回の記事はこちらをご覧ください)
斎藤:「節水ノズル」を開発されていますが、まずは高野さんの会社はどんなところなのかを教えていただけますか。
高野:当社は東大阪発のものづくり系ベンチャーです。私はもともと東大阪の町工場で育った3代目なんですね。祖父の代から小型の業務用ガスコック、焼き肉店やラーメン店にあるコンロの火力を調節するつまみですね、あれを作り続けて50年間やってきました。

斎藤:ガスコックと節水ノズルとは意外な組み合わせな気もしますが、何か共通点があるのでしょうか。
高野:業務用のガスコックは非常に高い精度が求められるんです。圧力の掛かっている気体を金属の面と面で受け止めるということは、加工精度の誤差は1000分の2ミリ以下でなければいけません。それを超えるとガス漏れを起こす可能性があるんです。
非常に高精度で、かつリスクが大きい。ガス漏れして爆発したら大変なことになる。それが、50年前の加工機械は、性能が全然大したことなくて、祖父の時代の加工機械で誤差を1000分の2ミリ以下に収めるなんて不可能で、一つひとつ手作りしていました。本当に職人の世界でやってきたものなんですね。それでも、製品の単価はものすごく安い。
それで父の代になって、独自にカスタマイズして精度を上げたNC(数値制御)加工機を使い、職人の手の感覚を数値化してプログラミングすることで、機械で24時間作り続けられる体制にしました。
斎藤:工場に職人が必要なくなったわけですね。
高野:全部無人にして、24時間、工場で機械だけがずっと回っていると。会社には父が1人。パートのおばちゃんとかはいますけど、職人は父1人だけ。父はそれを20代のときに実現したんですね。それでコストを激減させ、大量生産ができるようになった。「いい商品を安く作っていたら客が向こうから買いに来る」と言って、営業ゼロで、国内でもトップのシェアを取るまでになりました。
斎藤:それはすごいですね。
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