収益があがっているからこそ、売る

森田:昔は土地などの担保の価値で、お金を動かすのが当たり前でした。その考えが抜けず、担保の価値がなくなったときに、どうやってお金を使っていくか見立てをする力が銀行についていないんですね。これは都市部の住宅問題にも通じる話かもしれません。

山本:といいますと?

森田:昔のマンション購入のパターンは、老朽化したら階数を増やして増床し、その部分を売ることで建て替え費用をだすというモデルだった。でも物件自体の価値が下がり、建て替えができなくなっているマンションがたくさん出てきています。これから首都圏で起こる住宅問題は、賃貸よりも分譲マンションで悲惨なことになるのではないでしょうか。

山本:なるほど、そうかもしれません。実際、人口が流入する首都圏の中央区、港区、千代田区以外では、土地を寄せて地上げしてもデベロッパーが仕入れず駐車場のままになっているところがゴロゴロあります。

森田:日本は100年以上続いている株式会社が約2万6000社あり、創業200年を迎えている企業が約1200社あると。世界全体でみると、創業200年を超える会社の40%以上が日本に存在しているんだそうです。一方、アメリカは企業の新陳代謝が激しい。これは、資産に対する考えかたの違いが如実に表れています。IBMがレノボにThinkPad事業を売った時に、日本人は「収益が上がっているのになぜ売るのか」と言う人が多かった。

山本:でも、IBMとしては、「収益が上がっている今だからこそ、売るべきだ」と考えているわけですよね。

森田:その通り。でもこの発想は、日本になかなかないですよね。むしろ日本では、マイナスになるまで持ちこたえようとする傾向がある。どちらがいいという問題ではありませんが、不良資産は早めに処分するという方向に考えを切り替えていかないと、これから先は厳しいのではないでしょうか。

人口拡大期の仕組みが縮小期に齟齬

山本:「マイナスになるまで持ちこたえようとする」は、あらゆる場面で起きている現象ですね。地方の助成事業も、今は不採算になっているものが多いのでは?

木下:残念ながら、ほとんど不採算ですね…。日本の問題は、もともと人口の拡大期に制定された法律が、国の縮小期になってもそのまま残ってしまっていることで起きている不具合が多発しています。地方でいうと、拡大期は助けになっていた国の支援が、今は重荷を作ることになっている。100億円支援した結果、それから20年かけて地元に500億円の負担が生じる、なんてことも。助成金をもらうと、短期的には収入が上がっているようにみえるけれど、それで施設を建てた場合、維持費で毎年どんどんお金が出ていき、長期修繕が必要になったときには資金は底をついている。かつての右肩上がりなら良かったものの、既に我々が迎えている縮小期に合わせた制度になっていないのが、本来的な問題だと考えています。

藤田:それは個人事業主、起業家にも起こりうることですね。特に今問題だと考えているのは、銀行の融資のあり方です。実際に、大手企業を辞めて本屋を立ち上げた人から相談を受けたことがあります。その人は、もう自分もそろそろいい年になってきたので、本屋を誰かに引き継ぎたいと考えた。でも、見つからないんです。なぜなら、その社長は銀行から融資を受けるときに個人保証をしているから。後継者となると、その人にも銀行は個人保証を要求する。そこでみんな躊躇してしまうんです。

山本:日本の場合は、次の世代に生産性のある事業を引き継げるシステムになっていないんですね。地方の企業において、事業継承が上手くいかないケースは多くあるでしょう。

森田:いま、地方で大きな雇用を生んでいるのは、医療介護関係ですよね。たしかに医療介護を充実していけば、雇用も増えるし、住んでいる高齢者も助かる。でもそうした、社会保障医療のもとのお金は、稼いだお金じゃないんです。これを忘れてはいけません。右から左にまわってくるお金をベースにして、雇用が増えているという状況。そうするとだんだん原資となっている年金が減っていけば、医療保険が破綻し、結局、医療介護サービスももたなくなる。本来なら、稼いだお金をまわすべきなんですよね。そこにはある程度の人口や産業の集積、集約がないと難しい。

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