「地方から海外へ」の視点を

木下:商店街のおじいちゃんが言うのは、朝ちゃんと起きて店を開いて、博打もせず、女遊びもせず、まじめにやっていればつぶれる店なんて昔は一軒もなかった、ということ。物がない時代は、物を仕入れれば売れた。いかに卸の人と仲良くなって、物を仕入れるかが商売だとされていた。マーケティングなんかいらなかったんです。でも今は、朝から真面目に店を開いていても、つぶれる店はつぶれます。物がありすぎて売れない時代に変わってしまった。自分たちが生きる環境が変化していることを認識しないと。

山本:稼げないから若い人の賃金も上がらない、結婚できない、子どもも育てられない。そして、最終的には少子化に結びついていく。これはどうしたらいいのでしょうか。

木下:地方で言えば、都市中心部に集約して、効率性を上げれば都市的生活が営めるという方向に持っていくことでしょうね。それをやりながら、同時に農林水産業では小泉進次郎さんなども推進するような、農林改革を進めていく。ここで一番カギになるのは、地方がやってきた空港などのインフラ投資を、輸出産業の基幹として使うこと。

山本:例えばどういうことでしょう。

木下:北海道の紋別のカニは、底引き網などで大量に獲って、福井などより格安の値段でかに料理店などの店舗に売ってきたんです。でも、今後は国内での薄利多売ではやっていけません。そこで、国外市場に打って出る。地方で活用されてない空港を利用し、空輸して他の国で新鮮なまま売れば、もっと単価を引き上げられ、少ない漁獲量でも収益が上がるかもしれないんです。今までそういう発想がなかった。空港経営の見直しは、農林水産業の改革と一体で説明すると、事業の可能性がすごくあります。

山本:地方の特産品を商品化して価値を高め、高額で買ってくれるところへ捌いて稼ぐという方向に、ようやく目が向き始めたんですね。

プロジェクトファイナンスができない地方銀行

山本:ここ数年、地銀の再編が増えていますよね。木下さんの目から見た、地方の金融政策、経済政策はいかがですか。

木下:自民党の地方向けの政策メッセージについては、地方でも正当な競争をうながすなど、納得するものが多いと感じています。でも出て来る政策パッケージが昔のままだから、執行部分は疑問符がつきますね。実情として、地方には過剰なほどいろいろな資産があるんです。交通でいえば、空港や新幹線の駅など、国、地方が持っているだけでも570兆くらいの資産が地方都市にある。お城などの観光資産も財務省が持っていたりする。それを民間に開放して活用できるかどうか。

山本:交通インフラは、先程のお話のように、農林水産業の改革と一緒に活用が進めばいいですよね。

木下:はい。そして、金融も地方特有の問題がやっぱりあるんです。それは、地方で新しいプロジェクトを立ち上げるときに、融資の要となるプロジェクトファイナンスをちゃんとやれる、いわゆる「担保」をとらずに事業の収入を元に審査して融資できる銀行が各県に、ないこと。

山本:それはきついですね……。

木下:エクイティをどれくらい積んでほしいといったことは、本来銀行側から提案してほしいところです。でも、そういう試算や決断ができる銀行職員がなかなかいない。土地などを担保にしない限り貸せません、の一点張りなんです。東北のプロジェクトでどうにも融資してくれる銀行が見つからず、プロジェクトファイナンスができる部隊がある中国地方の銀行に相談してようやく融資が決定されたケースさえあります。このミスマッチが地域の差をさらに加速しています。

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