森田:日本にも強制的に休暇を取らせるような制度があれば、労働生産性が上がると思います。短い時間で働かないと給料が減るという仕組みにすれば、短時間でがんばるようになるでしょう。
出口:うちの会社のシングルマザーは、ものすごく生産性が高い。保育所に迎えに行く時間が決まっているから、それまでに集中して仕事を終わらせる。でもそういう制限がないとやっぱり、ちょっとのんびりしてしまいますよね。森田先生がおっしゃるように、やっぱり仕組みが必要だと思います。残業は原則禁止で、例えば、上司が具体的な目的を明示して、指示した場合のみに残業ができるという法律をつくるとか。
森田:本来、会社はそうなっているはずなんですが、多くの人が残業しています。残業代をもらうために、わざわざ定時まではゆっくりして、そこから働き出すなんて話もあるくらいです。
出口:それは企業のトップが悪いという面もあると思います。トップが遅くに会社に戻ってきて、社員が残っていたときに「ご苦労さん、遅くまでよくやっているね」と労うなんてもってのほか。そうすると、残っていることが偉い、という価値観が社員に染み付いてしまいます。
それぞれの生き方を認め合う社会に
森田:残業については、その会社の価値観も関係してきますね。ホワイトカラー・エグゼンプションについても、残業代カットだと批判する人もいますが、今のやり方だとむしろ生産性をわざわざ下げるような仕組みになっているので、そこを是正しようという面もあると思います。最初はある程度、実験的に新しい働き方や評価の制度をつくっていかなければいけないと思います。うまくいけば、その会社で働きたいという人が出てきて、人の移動が起きるはずなので。
出口:成果主義にして、人の移動を起こしたほうがいいと思います。企業文化もそうですが、国としてもどういう生き方がいいのか、ということをちゃんと議論すると同時に、市民の一人ひとりが考えていくべき問題だと思います。これは僕個人の考えですが、やはり仕事は集中して生産性を上げて、人生そのものをエンジョイしていきたい。家族と過ごす時間もつくりたい。そういうことが認められる社会にしていくんだ、というコンセンサスがあって初めて、人口減少問題への整合的な政策も効果が出てくるのだと思います。

(おわり)
(構成:崎谷実穂)
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