森田:かなり大きな改革になりますね。しかもこれは、定年の廃止の話にもつながっている。働いている間は年金を支給せず、むしろ年金の原資を払い続けてもらうとなると、だいぶ変わりますね。

出口:そうなんです。働いていると、健康寿命が延びます。介護にかかる費用も減る。介護期間というのは、平均寿命から健康寿命を差し引いたものなので。

一生働くことを前提に人生設計を見直す

森田:高齢者に長く働いてもらうということは、若者の働く場を奪わずに、どうやって高齢者の職場をつくっていくかということになりますね。

出口:僕は定年を廃止することで、若者の働く場は奪われないと思っています。定年を廃止すると、企業は年功序列をやめます。そうなると、「年が上というだけであまり働かない部長」などは存在しなくなるでしょう。自動的に実力主義になっていく。

森田:たしかに。移行期は人事管理が大変でしょうけれど、それくらいやらないといけないということですね。そうなると、生産性とはなにか、高齢者とはなにかという、定義自体を見直すことが必要になってくるでしょうね。ひいては、人生観そのものが変わってくることになる。

出口:そうだと思います。一生働くことを前提にすると、人生設計が変わります。

森田:昨年、スウェーデンとエストニアの視察に行ったんです。スウェーデンは、人口あたりの医師数が日本よりも多いんです。でも医師はものすごく忙しく、人出が足りないと言われていた。行ってみたら、それがなぜなのかわかりました。みんな、2ヶ月くらい休暇を取るんです(笑)。例えば医局に10人の医師が配置されていたとしても、そのうち2、3人はつねに休暇中。で、残りの人が忙しく働いていて、休暇の人が帰ってくると今度は残っていた人が休暇を取る。だから、実働している時間あたりの生産性はすごく高いけれど、全体の労働時間は少ない。一方、日本では1年中べたーっと働いていて労働時間は長いけれど、生産性が低い。

出口:どっちが人間らしいかというと、スウェーデンのほうが人間らしい生き方だと思います。

次ページ それぞれの生き方を認め合う社会に