森田:国際的な比較をした際に、勝ち目がないんですね。シンガポール国立大学では、自分の大学が世界の同レベルの大学に比べて、どこに優位性があってどこが劣っているのかを分析していました。そして、優れている部分はさらに伸ばそうとするし、弱い部分は補強する。海外の大学から優秀な先生を、高い給料を払って呼んでくるんです。そうして大学全体のマネジメントをして、競争力を高めています。日本の大学は、そういう視点が欠けているんじゃないでしょうか。

出口:地域おこしで必要なのは、「よそ者・ばか者・若者」と言いますね。大学もそうだと思うのです。これまでの伝統や権威を捨てて変えていくのは難しいと思うのですが、国全体の繁栄にとっても大学の改革は非常に重要で、ぜひやっていくべきです。文部科学省がそれを主導すればいいと思うのです。極端なことを言うと、「9月入学にしないと予算を出さない」くらいのことを言えばいい。

森田:それができれば、大きく変わりますね。

衰退を食い止めることが、いかにチャレンジングか

出口:あと、大学を変えるにはやっぱり企業を変えることです。だって、普通の人が何のために大学に行くのかというと、いいところに就職したいからでしょう?

森田:本音を言えば、そうでしょうね(笑)。

出口:だったら出口を変えれば、大学自体も変わらざるをえない。例えば、国際化のために英語ができる学生を増やしたかったら、企業が「TOEFL100点をとれない学生は採用しない」と決める。そうすれば、学生は必死に勉強するようになると思います。大学も学生からニーズがあれば、英語でおこなう授業を開講するなど対策をとるはず。変化が求められるときは、強いリーダーシップが必要です。誰かが蛮勇をふるって一点突破していかないと。

森田:そうですね。これから人口が減少して、日本もダウンサイジングをしていかなければいけない。本当に必要なことだけをする。何を削ぎ落とすかを判断する。そういうことができる政治のリーダーが求められますね。

出口:ロンドンに駐在しているとき、女性で初めてオックスフォードの学長になった方から、印象的な話を聞きました。大英帝国は、インドを失ったときから衰退が運命づけられているのだと。もう何十年も前からそのことを冷静に認識した上で、衰退のスピードをできるだけ落とそうとしてきた。衰退を食い止めることが、いかにチャレンジングであるか、ということをこの国のエリートに教えるのがオックスフォード唯一の役割なんだ、とおっしゃっていました。

森田:それはすごいですね。

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