森田:20世紀には、日本企業に就職して日本で働くことは、アジアの若いエリートにとって魅力的な選択肢だった。でも、今は「東京という街はとても魅力的で、住んでみたい。だけど日本企業には就職したくないから、外資系企業に入って日本支社に配属されたい」というのが本音だそうです。それはやはり、日本では自分たちの実力に応じた待遇を受けられないと、わかっているからなんです。

出口:給与レベルも違いますからね。

森田:そうです。それは大学も同じです。アメリカの大学のポストに就いている優秀な先生を、日本の某国立大学に呼び戻そうとした時、最後の給料の交渉で「話にならない」と断られるケースがわりとある。人材を新卒で一括採用して、少しずつ年齢に応じて給与を上げていくという人事システムを壊さないと、優秀な人を日本に入れても定着しないのではないでしょうか。

思った以上に魅力がない、日本の大学

出口:たしかに、そうかもしれません。僕もある大学の総長室のアドバイザーをしていたときに、日本の社会の問題点をいくつか聞きました。例えば、その大学の大学院を卒業した留学生は、日本語もできて日本のこともよくわかっているのだけれど、半分程度しか就職できないそうです。日本の企業が外国人をごく少数しか受け入れないから。そうした留学生たちは母国に帰り、「日本有数の国立大学の大学院を出たけれど、就職できなかったんだ」とまわりに話します。せっかく日本を好きになってくれて、日本で喜んで活躍したいと言ってくれた人に、わざわざ日本に対するマイナスイメージをつけて帰してしまっている。

森田:もったいないですね。

出口:次に、そもそも大学自体の魅力が、海外の有名大学に比べて低い。それは東京大学であっても、です。インドの経営者と、日本への留学生を募る件について話をしたら、日本の大学に魅力がない3つの理由をロジカルに述べられてしまいました。1つ目は言語。インドのエリート学生はみんなそもそも英語を話すのです。だから、なぜ日本語でしか講義をしていない大学に行かなければいけないのか。2つ目は大学の入学時期。世界的に9月が主流なのに、なぜ日本の春入学にわざわざ合わせなければいけないのか。3つ目は、これからインドはソフトウェアで生きていこうとしているんだと。でも、日本はかつて「ハード」は強かったかもしれないけれど、ソフト産業はそんなに発展していない。だったら、特に日本で学ぶメリットはない。もう、こう言われると反論の余地はないですね。

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