森田:日本は比較的人口ボーナスが早い段階から始まって、その時代が長かったと思います。急速に成長を遂げたアジアの国では、従属人口の比率が減ってからそれほど間を置かずにまた上がりだして、社会保障制度の整備や経済成長がなかなか追いつかなかったと言われています。人口ボーナスが終わると、人口ボーナス前よりも大変な状況になってしまいます。従属人口といっても、子どもより高齢者が多くなっているから。そこからまた経済成長をするのは、コストがかかるし、そうとう生産性を上げないと難しい。

出口:そうですね。

森田:いまだに「失われた◯◯年」という言い方をする人がいます。この言い方は、人口ボーナスの時代が"通常運行"で、今はちょっと例外的に悪くなっているだけ、というニュアンスがある。でもよく考えると、東京オリンピックが1964年で、日本の経済成長のピークが1990年だとすると、その間26年。そして、1990年から今年までが、ちょうど26年です。つまり、成長していた期間と失われた期間が同じということは、その失われた状態が、新しい基準になっているということです。以前の人口構造で起きたような経済成長はまず起こらないんだと、頭を切り替えないといけません。

「偽装離婚を考えている」というメールが

出口:人口構造を踏まえて政策を考えることは、非常に重要です。適切な対応策をとれば、増やすのは無理でも、下げ止まらせる、減るスピードを遅くすることくらいはできると思います。例えば、保育の問題。子どもを産めと言いながら、保育園に入るのに熾烈な競争があるなんて変じゃないですか。ある人から「保育園に入れるために偽装離婚をしようかと考えている」という相談メールをもらったことがあるんです。

森田:それは深刻ですね……。

出口:若い母親にここまで悩ませるような国に未来はあるのか、と憤りを覚えました。これって、ただ保育園を増やせばいいとか、そういう問題じゃなくて、もっとベースの部分から議論しなければ解決されない問題だと思います。人口を下げ止まらせるためにはなにをなすべきか。数字をきちんと見て、ベーシックな部分から考えるべきです。

(次回へ続く)

(構成:崎谷実穂)