森田:そうですね。昔の人口構成は、よく言われるようにピラミッド型だったわけです。それはまさに出口さんがおっしゃったように、たくさん生まれて若いうちに亡くなっていったから。上に行くほど人口が少ないというのは、そういうことです。飢饉やら病気やらで、50歳、60歳になる前に亡くなる人がすごく多かった。ところが今の人口構成は、頭でっかちのつぼ型になってきている。

出口:ある程度の年齢まで、容易に人が死なない社会になってしまった。

「人が死なない社会」に、どう向き合うか

森田:日本の15歳未満の「年少従属人口」と言われる世代が一番多かったのは、1954年なんです。そして、15歳から64歳までの「生産人口」世代のピークは、1995年です。そして、65歳以上の高齢者の人口が歴史上もっとも多くなるのは、2040年と予想されています。つまり、1955年から若い人が減り始めていた。人口減少の芽は出てきていたんです。

出口:生まれる子供の数が減って、下の方の段が小さくなってきていた、と。

森田:でも容易に若い人が死ななくなったおかげで、ピラミッドの下の段が減らずに上に上がっていって、全体的に人口は増えていた。ところが、その1955年にたくさん存在していた若者も、いまや60歳以上になりました。すると、少しずつこの世からいなくなって、全体の人口も減っていく。それが今の状況です。この構造自体は人口学の見地から見ると、20世紀の終わり頃からある程度わかっていたのですが、政策には反映されてこなかった。全体の数字だけ見ると、まだ人口も増えていたので、「がんばれば、この人口を維持できる」と錯覚してしまったんですね。それにともなってまだまだ経済成長もする、という勘違いも生まれてしまった。

出口:新しい人が増えて人口が増えているのと、人が死ななくなって人口が増えているのとでは、それから先に待っている未来がまったく違います。

森田:そうなんです。また、日本の経済成長は人口ボーナスがあったからだとも言えます。人口ボーナスは、生産人口に対し、従属人口の比率が少なくなっていくときに起こります。従属人口とは、15歳未満と65歳以上の養われる人口のことです。子どもとお年寄りですね。養われる人口が少なくなると、生産人口の生産余力が投資に向かって、それが高度成長をもたらします。日本では1960年代から1990年代くらいまで、人口ボーナス期でした。

出口:その頃は高齢者もまだ少なくて、かつ少子化が同時に始まりだしたので、従属人口が減ったのですね。

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