また、ヤリスWRCはラトバラのスタイルに合った車のようです。ヤリスはトミ・マキネンが自らテストを担当して開発を行いました。ラトバラとマキネンのドライビングスタイルは似ているそうです。往々にして北欧系のドライバーは、アグレッシブに後輪をドリフトさせる(滑らせる)ドライビングを好む傾向にあります。対して、オジエなどフランス人ドライバーは、タイヤを正確にグリップさせ、トラクションを重視する滑らかなドライビングスタイルです。ちなみに、同じフィンランド人でも、ハンニネンのほうはマキネンやラトバラほどアグレッシブなセッティングを好まないそうです。

 フィンランド拠点のフィンランド人によるチームに入り、自分好みの車に乗ったラトバラは、水を得た魚のようでした。

北欧人以外の勝者はたったの2人しかいない

 そして、ラリー・スウェーデンの特殊さも、今回の勝利の大きな要素の1つです。スウェーデンは、路面がすべて雪に覆われた、シーズン中唯一の完全スノーラリー。今回が65回目の開催ですが、長年にわたる歴史の中で、北欧人以外でこのラリーを制したのはたったの2人しかいないのです。その2人とは、9度の世界王者セバスチャン・ローブ(チームはシトロエン)と4度の世界王者オジエです。北欧人以外では、複数回の世界王者しか勝者がいないのです。北欧人以外のドライバーが雪のスウェーデンで勝つことが、いかに困難なのかがわかります。

路面が完全に雪と氷に覆われたスウェーデンのステージ。シーズン中唯一の完全スノーラリーだ(写真:TOYOTA GAZOO Racing)

 一方、ラトバラはスウェーデンを得意としています。2008年に自身の初優勝を飾ったのもスウェーデンでした(WRCの最年少優勝記録)。2012年、2014年にも優勝しています。

 木曜夜のスーパーSS(ごく短い距離のショー的なステージ)でトップタイムを出した後、金曜日から林道での本格的なステージが始まりました。そこでもラトバラは好調。ヒュンダイのi20クーペを操るティエリー・ヌービルと首位を争って接戦を繰り広げました。

 モンテカルロでの2位表彰台は、ライバルたちが次々と脱落していくなか、しぶとく生き残った結果得られたものでした。しかし、スウェーデンでは、ラトバラとヤリスWRCに確実な速さがありました。モンテカルロでは一度もステージ最速を出していないのに、スウェーデンでは、何度もトップタイムをマークしています。

 とはいえ、土曜日の夜までラリーをリードして優勝をほぼ手中に収めていたのは、モンテカルロに続いて、今回もヌービルでした。

 ラトバラは土曜日の午後、ヌービルから43秒遅れの2位。昨年はスランプに苦しんだヌービルですが、今年の新車i20クーペとは相性がバッチリなようです。また、今年のルールでは、選手権の順位順でラリー初日をスタートすることになっています。新雪が積もったステージでは、出走順が先であるほど、「雪かき」状態になってタイムをロスしてしまいます。モンテカルロを優勝して先頭出走だったオジエのタイムが伸びなかったのも、それが理由です。ラトバラは2番手出走なのでオジエほどではありませんが、やはり雪かきに苦労しました。

 それに対して、前戦モンテカルロでクラッシュしたため出走順が後方だったヌービルは、雪かきの役目を負わずに済んだのです。

スウェーデンでは先頭出走による不利から、タイムが伸び悩んだオジエ (写真:Red Bull Content Pool)

 ヌービルが3人目の非北欧人勝者になるかと思われていたのですが、土曜日最後のスーパーSSでまさかのクラッシュ。デイ・リタイヤとなってしまいました。スーパーSSは、スタジアムや競馬場などに作られた短距離の特設コースを走る、観客向けのショー的な要素が強く、全開で攻めたりするようなものではないのです。モンテカルロでもラリーをリードしながら、土曜日の最後のSSでクラッシュしてデイ・リタイヤになったヌービル。ここぞというときに限っての、2戦連続クラッシュ。なんだか、昔のラトバラを思い出すようです。