私は、今年のモンテカルロ勝者はミークが濃厚だと予想していたので、今回の結果にはガッカリでした。以前のミークは、速いときは速いけれど大クラッシュして消える、ある意味ラトバラタイプのドライバーでした。でも2015年に初勝利を飾って以降はみるみる安定性を増し、2016年には2勝を挙げ、確実に速いドライバーへと成長していたのです。初戦がこのような結果だったので、シトロエンの新車の出来はまだよくわかりません。まるまる1年かけたので、悪いはずはないのですが。今後、ミークが昨年のような速さと確実性を取り戻せれば、十分、タイトルを狙える位置に上がってくるはずです。

 そんなわけで、今年のWRCは、これまでのような「またオジエか」状態にはならないと思います。Mスポーツ(フォード)のオジエ、ヒュンダイのヌービル、シトロエンのミークが激しく争うことになるのではないでしょうか。また、伏兵として、オジエのチームメイトであるタナクやヒュンダイのヘイデン・パッドンも侮れません。タナクはもともとモンテカルロのような路面変化の激しいラリーを苦手としているのに、今回、オジエに次ぐ速さを見せていました。得意とする高速ステージが多いポーランドやフィンランドでは、初優勝も狙えるかもしれません。

「君、何のドライバー?」

 ちなみに、私は2010年頃からタナクに注目していて、彼のファンでした。2010年のラリー・フィンランド後にヘルシンキで行われたモータースポーツイベントで、タナクに初めて会いました。偶然近くにいたおじさんが「誰か会いたいドライバーはいるか?」と、ドライバーたちの待機所の裏へ連れて行ってくれたのです。

 「オット・タナクに会いたい」というと、そのおじさんが中で待機しているドライバーたちに「おーい、タナクとやらに会いたいという日本人のファンがいるんだ」と声をかけ、わざわざタナクが出てきてくれれたので、私は一緒に写真を撮ってもらいました。そのとき、おじさんは「俺は君のことを全く知らないんだが、君は何をやってるドライバーなの?」とタナク本人に聞いていて、タナクは「ラリーだよ」と答えていました。そのくらい、当時のタナクは無名だったのです(いやはや…)。

 私がオジエのファンになったのは2011年からなので、実はオジエファン歴よりもタナクファン歴のほうが長く、おそらく日本で一番長いタナクファンなのではないかと思っています。

2010年、当時は無名だったタナクと撮影した写真。まだSWRC(WRCの下位カテゴリー)にすら参戦していませんでしたが、ヨーロッパのラリーや限定参戦のPWRCカテゴリーなどでものすごい速さを見せていたので、気になっていました

 話が脱線してしまいました。とにかく、今年のWRCは誰が勝つか予測が付かない、混戦必至の面白い展開になりそうです。オジエがタイトル5連覇を成し遂げられるのか、新チャンピオンが誕生するのか、ドキドキワクワクです。昨年までは、オジエが圧倒的に強く、オジエファンの私ですら正直に言うと少々飽きていました(すみません!)。でも今年は状況が全く違います。新時代のWRCが幕開けしました。しばらくWRCを見ていなかったという方も、今年はぜひご覧になってください。

今年は地上波でも見られます!

 そうはいっても、昔と違って地上派やBSで放送はないのでしょ? と思われるかもしれません。大丈夫です。確かに、2009年のスバル撤退以降、日本でWRCの無料番組はなくなり、テレビで観戦するには、CS放送のJ SPORTSに加入するしかありませんでした。しかし、久々に地上派でもWRC番組が始まります。トヨタがスポンサーに付いて、テレビ朝日系列で「地球の走り方~世界ラリー応援宣言~」という番組が2月からスタート。

 こちらは英語になりますが、「Red Bull TV」では、WRC全戦を無料で視聴可能です。各デイのハイライトは翌日にはアップされていますし、ステージからの生中継もあります。また、スマートフォンのアプリでも見ることができます。
WRC公式サイトの日本語版(こちら)が、J SPORTSのサイト内に作られていて、ニュース記事などを日本語で読めるようにもなっています。

 ラリー期間中、私はツイッターでチームや各選手、WRCメディアの発信する情報を追いかけつつ、自宅観戦していました。日本語でWRCに関するつぶやきをツイートする場合、#WRCjpというハッシュタグが広く使われています。でも、昨年まではラリー期間中ですら、#WRCjpタグのツイートはまばらで寂しい状況でした。

 ところが、今回のモンテカルロでは、#WRCjpタグのツイートがあふれ、ツイッターでも大盛り上がりだったのです。開幕戦ということもありますが、やはり、日本メーカーの参戦が大きく影響していることは間違いないでしょう。日本でもWRCの知名度がもっと上がり、ファンが増えるよう、ぜひともトヨタにはがんばってもらいたい、そして、いつか、WRCラリー・ジャパンが復活することを願っています。

 トヨタの復帰を歓迎しているのは、日本人のファンだけではありません。海外観戦に行ったとき、何度も「トヨタはいつ復帰するの?」と聞かれたものです。かつて黄金時代を築いたトヨタや日本の自動車メーカーのファンは、今でも相当数います。世界のWRCファンのためにも、トヨタの活躍に期待しています。

ギリシア(ラリー・アクロポリス)で出会ったWRCファンたち。左の彼はトヨタのファンでトヨタのジャケットを着ています。ちょっとわかりづらいかもしれませんが、胸のトヨタのロゴを指さしています(土埃がすごいので、皆マスクをしています)

 最後に1つ悲しいニュースを。モンテカルロのSS1で、ヒュンダイのヘイデン・パッドンがクラッシュしました。このクラッシュにより、観客の1人が亡くなりました。亡くなられた観客の方のご冥福をお祈りします。亡くなった方は、事前にコースの安全を確認する0カーが走り去った後に観戦禁止エリアへ立ち入り、かつ、危険なコーナーのアウト側で地面と同じ高さのところに座り、車のバックショットを撮りたいと、車が来る方向を見ずにカメラを構えていたということです。

 モータースポーツ観戦は危険を伴います。なかでも、コースと観客の距離が近いラリーは、その分、大迫力を得られるのですが、危険も高くなります。海外のラリーでは、観客の規制が比較的緩く、自由な場所で観戦できることもあります(日本ではかなり規制が厳しい)。WRCを現地観戦に行かれる方は、ぜひ、「車が飛び出てきても逃げられるか」と考えて、安全な位置から観戦してください。ラリー観戦は「楽しく、安全に」行いましょう。