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 ところで、日本がカレンダーに加わる場合、代わりにカレンダーから落ちると見られていたイベントがありました。新ラリー・ジャパンはターマックラリーです。新たなターマックラリーが加わるなら、ターマックラリーのどれかが落ちるのが妥当でした。従来のWRCカレンダーでターマックラリーはコルシカとドイツの2つ。このうち、資金の面で不安定なコルシカが落選すると思われていました。

 また、2019年には日本と同時にチリも加わることになっていました。チリはグラベルラリーです。コルシカが落ち、日本とチリが入った全14戦になる――2018年秋の段階では、WRC界のほとんどの人がそう考えていたのです。

 コルシカには、ほかにも不利な点があります。ヨーロッパ内とはいえ、島であるため、船での輸送が必須になるので、参戦するチームにとってはロジスティクスの費用がかさみます。また、大陸での開催に比べて、集客力の面でも限界があります。もちろん、極東開催の日本は、ロジスティクス費用はコルシカよりうんと跳ね上がるのですが、主催者がそれを負担することで合意していると言われていました。チリも同様です。また、2018年からカレンダーに加わったトルコも、ロジスティクス費用を一部負担していると言われています。

コルシカ島で開催されるツール・ド・コルス。ラリー・フランスでもある ©Citroen Racing

寝耳に水。日本が落選

 ところが、10月11日、2019年のWRCカレンダーから日本が落ちるという急転直下なニュースが飛び込んできました。10月12日にパリで開催される世界モータースポーツ評議会の前日である11日、同じくパリでWRC委員会が開かれました。その委員会で日本が落ちるという結論に至ったというのです。開催確実から、一転、落選とは。いったいなぜ?

 落選すると思われていたコルシカが、カレンダー入りを果たしたからです。当初、WRCプロモーターは、コルシカを落として日本とチリを加えた14戦のカレンダーを提案する予定でした。しかし、直前になってFIAが待ったをかけ、コルシカも加えるように言ったのです。コルシカは、ラリー・フランス。FIA会長のジャン・トッドはフランス人。コルシカはしっかりFIAを味方に付けていたのです。FIAはコルシカを落とすことなく、全15戦にするようWRCプロモーターに指示しました。ちなみに、コルシカ開催によってチームにロジスティクス費用が増える問題を解決するべく、FIAは選手権登録料を50%割引することをチーム側に提案したと言われています。

 かくして11日に開催されたWRC委員会では、全15戦のカレンダーについて議論されることになったのですが、委員会のメンバーである各マニファクチャラーの代表から反対の声が上がりました。全14戦と聞いていたのに、いきなり15戦に増えたのですから、無理もありません。日本開催でのロジスティクス費用は主催者が負担するとも言われていましたが、まだ確実とは言えませんし、例え本当に負担したとしても、カレンダーが過密になることでチームはシーズンを通しての日程調整、人員のやりくりやらで、どうしてもコストが増えるのは目に見えています。

 一説には、ヒュンダイとシトロエンが反対したとも言われています。シトロエンはフランスのメーカーですし、ラリー・フランスを失うのに反対なのは当然と言えます。また、シトロエンにとって大きな市場である中国ならともかく、日本では商業的価値が乏しいでしょう。万年財政難のMスポーツが反対したのかどうかはわかりませんが、諸手を挙げて賛成するはずもないでしょう。トヨタ以外のマニュファクチャラーは「年間15戦」はとても受け入れられなかったのです。

2019年のWRCカレンダー入りが確定したチリ。主催者はWRCプロモーターのオリバー・シースラ氏と祝杯を挙げる ©WRC Promoter

 では、日本を入れてチリを落とす案はなかったのかというと……ありませんでした。冒頭に書いた2019年のカレンダーをご覧ください。チリはアルゼンチンのすぐ後に開催となっています。アルゼンチンに送った機材をそのままチリに運べるわけです。日本は最も近いオーストラリアからですら相当の距離があります。加えて、チリではラリーがサッカーに次ぐ人気の国民的スポーツなのだそうです。日本ではWRCが何か知っている人のほうが極めてまれなくらいですから、人気の差は言わずもがな。