2018年シーズンを盛り上げたドライバー、コドライバー達。2019年はどう戦うのか? ©Yukari Okamoto
2018年シーズンを盛り上げたドライバー、コドライバー達。2019年はどう戦うのか? ©Yukari Okamoto

そしてどうなる2019年?

 2019年のWRCシーズンは、1月24日から始まるラリー・モンテカルロで開幕します。さあ、今年はどんな戦いが繰り広げられるのでしょうか?

 トヨタ、そしてタナクがさらに爆走するのか? オジェやヌーヴィルは? また、2018年シーズンはタナクの影に隠れてしまったラトバラ。再び速さを取り戻すでしょうか?2019年、トヨタからはラッピが抜けてクリス・ミークが加入しました。ミークは、一発の速さはオジェやタナクに負けないドライバーです。しかし、チーム代表のマキネンがミークを採用したのには、心底驚きました。ミークは速いけれども安定性には欠けるドライバーなのです。しかも39歳と若くもない。安定しているけれどもそこそこのドライバーより、ハマったときにめちゃくちゃ速いドライバーを入れることで、さらに攻めるチームをマキネンは目指しているのかもしれません。ミークの活躍次第で、タナクもラトバラも、うかうかしていたらエースの座を奪われかねないのですから。

 マニュファクチャラー選手権は、2019年もトヨタとヒュンダイの一騎打ちになるでしょう。シトロエンは予算の都合で3台目をエントリーできないので、3台のうち上位2台がポイントを計上できるルールのもとでは不利ですから。ヒュンダイは、エースのヌーヴィルとセカンドドライバーのアンドレアス・ミケルセンがフル参戦。3台目の車をローブと、ダニエル・ソルドがシェアする形です。

 ローブが援護についているというのは、かなり強力です。フル参戦しないので、ラリー初日に後方からスタートできるという強みもあります。また、ベテランのソルドはミスが少なく、ポイントの取りこぼしがない職人タイプです。毎年、マニュファクチャラー選手権でリードしながらも最後には勝てず、2018年はドライバー選手権も有利にリードしていたのに結局勝てなかったので、ヒュンダイ上層部はチーム代表を解任してしまいました。もう今年は死に物狂いでタイトルを取りに来る姿勢です。

 ところで、以前(こちら)、「往年のラリーファンがアウディ・クワトロやランチア・デルタ、三菱・ランサーエボリューションといった車名を聞くだけで心が思わず躍ってしまうように、トヨタ・ヤリスもなってくれればいい」と書きました。今や、その通りになっています。2018年にすごい速さを見せたヤリスWRC、今ラリーファンが「ベストカー」を選ぶなら、ヤリスWRCでしょう。選手権では3位に終わりましたが、2018年シーズンでのステージ勝利数では、タナクが圧倒的に1位だったのですから。

 ただし、速さだけでは選手権を勝つことができないのは、昨年オジェがタイトル争いで見せた通りです。タナクはサスペンションやラジエーターが壊れたり、パンクしたりといったトラブルによってタイトルを失ったのですが、彼のセッティングやドライビングがマシンに負荷をかけていたり、タイヤ選択やタイヤの使い方によってパンクをしてしまった可能性があります。昨年のトラブルの原因はきっちり調査されているでしょうから、彼が不必要なトラブルを生まないドライビングをし、シーズンを通してタイトルを取るための戦い方を身につけたら、彼が王者になるのは、そう遠くない気がします。

「Yさん、久し振りに書かせてもらいましたけど、こんなに濃いコラム、大丈夫なんですか?」
「……いいんじゃないですか。WRCが好きな方にはもちろん、この記事でひとりでもモータースポーツやラリーに興味を持つ方が増えたら嬉しいよね。もうNBOも最終コーナーを曲がったし、岡本さんの悔いの無い走りを見せてください!」
「了解です。じゃ、次回は、ラリージャパンが消えた深層について書きますね!」
「こ、濃いねえ……明日も掲載予定です。お楽しみに」

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