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 皆様、WRC(ワールド・ラリー・チャンピオンシップ、世界ラリー選手権)をご存じでしょうか。F1と並んで、FIA(世界自動車連盟)が主催する自動車競技の世界選手権です。F1などはサーキットで開催されますが、ラリーの舞台は、一般道。泥道も雪道もなんのその、市販車をベースに作られたラリーカーが爆走して、激しいクラッシュや大回転もしょっちゅうという、ひと言で言えば「頭がおかしい」競技です。

 どれほどぶっ飛んだ競技かは、こちらの2018年シーズンクラッシュ集映像をご覧くださいませ。

 それほど激しいクラッシュが多発したシーズンでもない1年ですら、この有様なのです。

 さて、フェルディナンド・ヤマグチ氏が「(日本で) F1なんて誰が見るの」とおっしゃっていましたが、WRCに至っては、見ている人がどれだけいるのか、とっても不安になります。しかしWRCは、ヨーロッパなどでは何十万人もの観客が押し寄せる大人気スポーツで、ラリーの聖地とも言われるフィンランドに至っては、F1の生中継は無料放送で見られないのに、ラリー・フィンランドはTV放送され、国民の10%が視聴するとも言われています。

 そんなWRCをこよなく愛し、日経ビジネスオンラインにひっそりと、こんなWRCのコラムを持っていた私、岡本がWRCの2018年シーズンを振り返るとともに、2019年の展望を解説させていただきたいと思います。

 え、前回の記事が2017年だったのに、なぜ今さら? それは、好き勝手やらせてくださった日経ビジネスオンラインがまもなく休刊するから、ではなくて、2018年が近年まれに見る白熱したシーズンだったからです。

 そして、トヨタは参戦2年目にして、早くもマニュファクチャラーズ・タイトルを獲得しました。いや、めでたい!  同じくトヨタが2018年に成し遂げたル・マン初優勝もすごいことなのですが、アウディ、ポルシェが撤退してしまい、ライバルが不在でした(もちろん、故障や自損、整備ミスとの戦いがありますが)。こちらは好敵手たちとガチで1年間戦って戦って、成し遂げた栄冠なのです!

WRCの選手権は3つのタイトルがある

 WRCの選手権は、ドライバー、コドライバー(助手席に座り、ナビゲーターを務めます)、マニュファクチャラーの3部門があります。ラリーはドライバーとコドライバーが2人で戦うスポーツなので、通常、ドライバー選手権で優勝した選手のコドライバーが、コドライバー選手権の勝者となります。一方、マニュファクチャラー選手権は、ドライバー選手権で優勝した選手が所属するチームが獲得するとは限りません。各チームは、1つのラリーに3台の車をエントリーできます。そのうち、上位2台が獲得したポイントをマニュファクチャラー選手権に計上できる仕組みです。要するに、チーム戦なのです。

 ドライバー選手権はセバスチャン・オジェ、コドライバー選手権はジュリアン・イングラシアが獲得しました。彼らにとって、6年連続、6度目のタイトルです。WRCをご存じの方は、「またオジェ?」と思われたかもしれません。何しろ、WRCのドライバータイトルは、2004~2012年までフランス人のセバスチャン・ローブが9年連続で獲得。ローブがフル参戦から引退した2013年以降は、同じくフランス人で同じ名前のセバスチャン・オジェが勝ち続け、これで15年もフランス人のセバスチャンがタイトルを独占しているのです。

 ……いやいや、待ってください。2018年にオジェがタイトルを獲得できるとは、熱烈なオジェファンの私ですら、ほぼあきらめていたのです。彼の6度のタイトルで、昨年獲得したタイトルが最も大変なものだったのは、間違いありません。ドライバー選手権は、最終戦オーストラリアまでもつれたのです。

セバスチャン・オジェ/ジュリアン・イングラシア組が6度目のタイトルを獲得 ©Red Bull Content Pool