クリエーティブと地域産業をつなぐ、新しい流通

今年社長に就任されたという、「株式会社飛騨の森でクマは踊る(通称:ヒダクマ)」というのは、どういうプロジェクトなんですか。

:森林再生とものづくりを通じて地域産業を創出するプロジェクトです。

 きっかけは、友人に誘われてふらりと飛騨に遊びに行ったことなんです。そこで日本の林業、そして森の状況がいかに危機的状況にあるかを教わりました。

 日本って、国土の7割が森なんです。先進国として、フィンランドに次ぐ森林大国でもある。2国ともほぼ同じ森林率でありながら、まったく異なる数字があります。フィンランド126%に対して、日本は28%。何の数字か分かりますか。「木材の自給率」です。

ずいぶん差がありますね。

:フィンランドは林業を大切な輸出産業として育てることに成功している一方で、日本は活用できているとはいえない状況です。戦後、早く育つスギやヒノキを植えられるだけ植えた後、輸入自由化により木材価格が暴落してしまい、人件費・輸送費等がかかるために間伐をしてこなかった。だから今育っている木は細くて弱い木ばかりなんです。人の手入れがされていない、密集した森では日光が地表まで届かず、森の生態系がバランスを崩したり、治水力が落ちて土砂災害が起きたりするなどの問題が生じます。

 でも、森林は「木材価値」だけで捉えられるべきではありません。森は豊かな生態系を担っています。またヒダクマの拠点である飛騨古川には、「組木」をはじめとした木造建築や木材加工の優れた伝統技術が息づいています。例えば組木の設計図を3Dデータ化して公開し、世界中の建築家やデザイナーが飛騨の匠の技とコラボレーションできる機会が生まれたら、森林・木材活用の可能性が見えるのでは? 「伝統×デジタルファブリケーション」から生まれる新たな価値を探求してみたいと思っています。

 そのためには、クリエーティブの力が欠かせません。サプライチェーンが分断されない、いわばクリエーティブと地域産業をつなぐ新しい流通にチャレンジしたいと思っています。

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