21世紀は都市間競争の時代だ。2020年東京五輪に向けて都市の改造や再開発が進むなか、東京が世界で最も魅力的な「グローバル都市TOKYO」に進化するにはどうすればいいのか。2020年以降を見据えて「TOKYO」の持続的発展と課題解決に向けた具体的な提言を続けてきた(詳細は「NeXTOKYO Project」参照)。

 TOKYOの進化の方向性を、NeXTOKYOメンバーである各界のキーパーソンと語り、未来へのヒントを探る。今回はロフトワーク代表の林千晶氏。クリエーティブの力で、ビジネスにイノベーションを起こしたい。そんな思いで数々の企業のサイトや空間、映像、イラストなどの企画・制作を手がけている。そんな林代表が描く、クリエーティブとビジネスの理想的な関係とは。聞き手はA.T.カーニー日本法人会長の梅澤高明(NeXTOKYOプロジェクト)、構成は宮本恵理子。

ロフトワーク代表取締役。1971年生、アラブ首長国育ち。早稲田大学商学部、ボストン大学大学院ジャーナリズム学科卒。花王を経て、2000年にロフトワークを起業。約2.5万人が登録するクリエーターネットワークを核に、年560件以上のクリエーティブプロジェクトを企業や行政、大学などと進める。2012年にデジタルもの作りカフェFabCafeを創業。MITメディアラボ所長補佐、グッドデザイン賞審査員等を兼任。2015年、クリエーティブな視点で飛騨の森に新しい価値を創造する「飛騨の森でクマは踊る」代表取締役に就任。書籍『シェアをデザインする』『Web プロジェクトマネジメント標準』などを執筆(撮影:竹井 俊晴、ほかも同じ)

林さんは15年前にロフトワークを立ち上げて以降、多くのクリエーターと組みながら、斬新なプロジェクトを展開しています。お会いする度に新しいことを始めている印象ですが、今はどんなことを仕掛けているのでしょう。

林氏(以下、林):たくさんあるんですけど(笑)、一番新しいプロジェクトは、つい一昨日に始まったものかな(取材は2015年10月7日)。まだ仮称ですが、「東京ステイ100」といって、東京中をロケハンしながら100の体験を見つけようというものです。

どんな体験なのでしょう。

:見つけたいのは、いわゆる観光名所的なスポットだけではなく、日常に根差した東京を彩る文化的な風景や体験です。

 例えば、表参道を1本裏に入った路地に、60歳くらいのおばあちゃんたちが営むパン教室があるのをご存知ですか。通りすがりの私に「焼き立てだから美味しいよ。ちょっと食べてごらん」と話しかけてくれる。先日は部屋に上がって一緒にパンとお茶をいただきました(笑)。ほかにも、渋谷のホテル街には「名曲喫茶ライオン」というカフェがある。クラシック音楽が大音量でかかっていて、お客さんは誰もしゃべりません。まるで瞑想のための空間。これらは「最先端都市・TOKYO」というイメージの対極にある。でも、そういうストーリーがごろごろあることが東京の魅力だし、豊かさです。そんな東京の「私小説」みたいな体験を集めたいなと思っています。