大学も本気で稼ぐ意欲を

東京のモノ作りの土壌をより豊かにするには、何が大切でしょう。

小笠原:まずは量産試作できる場所を準備することですね。1000個くらいまでの試作に特化した工場を秋葉原に作るとか。同時に、試しに売ることのできるエリアも作る。「売る」ことが前提の「作る」であることが大事なので。

 例えば電波についても、433メガヘルツ帯が日本では自由に使えないことが、グローバルで同じ安価な通信モジュールが使えないなど壁になっている部分もある。ですから、それを認める特区を設けるとかコンテナ以外にも使えるようにしていくと、世界向けの商品がもっと生まれやすくなると思います。

 大学の研究室も、もっと本気で稼ぐ意欲を持つといいでしょうね。無線給電技術で有名な東京大学の川原圭博先生は、かつてネットエイジでアルバイトをしていた経験がある。同年代がネットビジネスで成功した姿も見ているから、「自分たちの技術で人々の生活を良くして、研究室の収入になればいいよね」とシンプルに考えられる方です。筑波大学の落合陽一君も、ベンチャーキャピタルから出資を受けて研究とビジネスを両立させています。こういう研究者がもっと増えてほしいなと願っています。技術が世に出る足かせとして、アカデミック分野の閉じこもりはありますから。

若い学生もそうですが、これからはおじちゃん、おばちゃんたちの起業促進も課題です。

小笠原:おっしゃるとおりで、むしろそうしないと仕事はなくなっていくと思います。マイクロアントレプレナーの育成については、東京都にも提案しました。ハードウエアのプロトタイピング(試作)は、数年後には2000年以前の10分の1くらいの時間とコストでできるようになります。

 そうすると大規模なオンデマンド製造が可能になり、同時に収益化していく。特に予防医療の分野が伸びると思っています。2020年代前半には、おそらくネット上に1000億個くらいのデバイスが出回っていると予測しています。そのうちの半分くらいは新たなアントレプレナーによるスタートアップが担っているものになると思います。

 予防医療が進み、医療の本丸である対症療法に切り込んでくるのが2020年あたりです。平行して仮想通貨やドローン、モビリティ、物流、農業あたりの分野でも変革が進んで、2030年代には今の労働人口の半分くらいの仕事がロボットに取って代わられている。その頃、自動運転による事故削減も含めて、日本の平均寿命は100歳を超えていると思うんです。その時に再生医療分野の強みを日本がリードしていく。

IoTの次に来るIoA

そう考えると、「IoA(インターネット・オブ・アビリティ=ネットによる能力拡張)」にも早めに取り組んでおくべきですね。

小笠原:IoAは、IoTの次に来ると言われているキーワードです。絶対にやったほうがいいと思います。要は人間の体の中にセンサーが入り込んで、より早く体内変化をセンシングする。センシティブデータを取り扱うならば、認証制度のような整備は急がないといけませんね。

 IoAについて最近面白いと思っているのが、準静電界です。これは言い換えると気配のようなもので、サメが水深の3メートル下に潜ったヒラメを見つけられるのはなぜか、というような疑問から注目されているテーマです。

 僕たちも室内に不機嫌な人がいると何となく分かるということはありますよね。それを真面目に研究している人たちがいるんです。これを突き詰めて、言葉にしなくても伝わる感情変化のセンシング技術に発展したらおもしろいなと。「何となく」とされていたものが、可視化できるようになる。