技術の「組み合わせ」でイノベーションは起こせる

スタートアップと組む方がダサくならない。

小笠原:例えば、IoTのロードバイク(詳細は「日本の製造業、最後のチャンスがIoT」)は、3人のエンジニアが半年くらいの期間であっという間に完成させました。

 自転車からこけると「落車なう」とツイートする遊び心も搭載している(笑)。なぜこんなに早く完成させられるのかというと、セットアップのセンスの違いなんです。チタン素材の3Dプリントにしても、9軸センサーにしても、技術としては既にあるもをセットアップ、つまり組み合わせている。この新たな組み合わせでイノベーションが生まれるわけです。技術のオープン化が進んで、そういう流れが起こりやすくなっています。

 組み合わせる際に肝になるのが、インターネットとつなげることです。インターネットを組み込むことで、巨大な計算能力とつながることになります。昔は商品がその中で完結していましたが、今は世界で公開されている機能と連携できるようになった。

 僕が設立に携わったさくらインターネットでは、GPU(グラフィックス・プロセシング・ユニット)を使った計算に特化して計算能力だけを時間単位やタスク単位で貸し出すサービスを始めようとしています。クラウドによって、商品に突き抜けた機能を組み込めるようになってきたわけです。

モノ作りが変わってきた、と。売り方にも変化はありますか。

小笠原:売り方の変革は、特に日本の大企業の課題です。インターネットによってモノが世界中で販売できるようになりました。こうした事実さえあまり認識されていないのが現状ですが、スタートアップと組んで作った新しいモノを、簡単に試せる販売網で売ってみるといいと思っています。大企業が自社のディストリビューションを使うのは非常にコストがかかるわけですから。テストマーケだけでも何千万円、何億円とかかかる。だから結局、やらないことが多い。そしてイノベーションが衰退するのです。

 けれど今は、例えばオランダに1人だけ社員を派遣して(注:オランダは日蘭通商航海条約によって、労働許可のビザがなくても日本人が就労することができる)、インターネット通販のアマゾンに申し込めば、欧州二十数カ国で販売できる状態をすぐに整えることができるのです。モノなんて10個か20個作ってみて、売れるかどうか試せばいい。何億円も投じてテストマーケティングをしたり、コストを抑えるために早期退職者を募ったりするより、スタートアップと組めばいいんです。

大企業とスタートアップが組んだ最近の成功例はありますか。

小笠原:分かりやすいのは「SYMAX」の例でしょう。20代の女性が開発した、排泄物から尿酸値や糖の値を測定できるスマートトイレを、商社の双日が営業支援することになりました。双日は実証実験として社員の健康管理に使用することで、健康保険組合の医療費負担を下げられるかなどを確認する狙いもあるようです。このトイレが日本中に浸透すれば、糖尿病予防に大きく貢献しますし、医療費削減の切り札になるかもしれない。

 こういった新しいモノ作りがビジネスとして加速する環境として、東京は最適です。投資も集まりやすいし、チャレンジを宣言しやすい。大企業の本社機能もそろっています。つい最近も、「UPQ(アップ・キュー)」の中澤優子がその辺に座っていましたが、「やればできる」が可能になる街が東京なのだと思います。