21世紀は都市間競争の時代だ。2020年東京五輪に向けて都市の改造や再開発が進む中、東京が世界で最も魅力的な「グローバル都市TOKYO」に進化するにはどうすればいいのか。2020年以降を見据えて「TOKYO」の持続的発展と課題解決に向けた具体的な提言を続けてきた(詳細は「NeXTOKYO Project」参照)。

 TOKYOの進化の方向性を、NeXTOKYOメンバーである各界のキーパーソンと語り、未来へのヒントを探る。今回は、DMM.make AKIBAのプロデューサーを務める小笠原治氏。東京・秋葉原に設けた「DMM.make AKIBA」は新しいモノ作りの拠点として、世界中から注目を集めている。日本のモノ作りの未来や東京という都市の強みについて、小笠原氏が語る。聞き手はA.T.カーニー日本法人会長の梅澤高明(NeXTOKYOプロジェクト)、構成は宮本恵理子。

1971年京都府生まれ。さくらインターネット株式会社の共同ファウンダーを経て、ネット系事業会社の代表を歴任。2011年にnomadを設立し「Open x Share x Join」をキーワードにシード投資とシェアスペースの運営など、スタートアップ支援事業を軸に活動。2013年にはハードウエア・スタートアップ向けの投資プログラムを法人化し、ABBALabとしてプロトタイピングに特化した投資事業を開始。2014年秋に秋葉原に誕生した DMM.make AKIBAのプロデューサーとしても知られる。(取材日:2016年2月15日、撮影:竹井俊晴)
1971年京都府生まれ。さくらインターネット株式会社の共同ファウンダーを経て、ネット系事業会社の代表を歴任。2011年にnomadを設立し「Open x Share x Join」をキーワードにシード投資とシェアスペースの運営など、スタートアップ支援事業を軸に活動。2013年にはハードウエア・スタートアップ向けの投資プログラムを法人化し、ABBALabとしてプロトタイピングに特化した投資事業を開始。2014年秋に秋葉原に誕生した DMM.make AKIBAのプロデューサーとしても知られる。(取材日:2016年2月15日、撮影:竹井俊晴)

小笠原さんは著書『メイカーズ進化論』で、モノが「作れる」だけでなく、「売れる」ための新たな行動が必要だとおっしゃっています。

小笠原氏(以下、小笠原):これを言うと嫌がる人もいると思います(笑)。ただ、日本の大手メーカーは基礎研究や研究開発の強みがまだまだあって、世界の企業に部品を売るデバイスメーカーとしての地位も維持しています。世界中に独自の販売網を築いていて、たとえ新興国メーカーが台頭してきているとはいえ、まだまだ優位性がある。けれど一方で、「新しいモノを少量で作って試しに売ってみる」という点では動きが非常に鈍い。

 理由の一つにはコモディティー化したビジネスを守るための組織になったということがあります。世界に知られるような日本のメーカーは、皆さんかつてイノベーションを起こしている。明確なイノベーターだったのだけれど、売れた結果、コモディティー化してしまった。モノを守り、雇用を守ることにエネルギーを注ぎ、超多層型決裁の組織になった。するとセットアップがダサくなるんです。

 組織が守りに入ると、デザイナーではない人がデザインの判断をしたり、技術者がマネジメントをするようになったり、という風に内向きのロジックが生まれてしまいます。いわゆる大企業病というものです。

 そういう組織がIoTに取り組もうとしても余計ダサくなる。おじさんが若いふりをするとダサいのと一緒です。だったらおじさんは無理せず、若い人と組みましょうよ、と。機動力のあるスタートアップと組みませんか、という提案を僕はあちこちでしています。

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