21世紀は都市間競争の時代だ。2020年東京五輪に向けて都市の改造や再開発が進む中、東京が世界で最も魅力的な「グローバル都市TOKYO」に進化するにはどうすればいいのか。2020年以降を見据えて「TOKYO」の持続的発展と課題解決に向けた具体的な提言を続けてきた(詳細は「NeXTOKYO Project」参照)。
TOKYOの進化の方向性を、NeXTOKYOメンバーである各界のキーパーソンと語り、未来へのヒントを探る。今回は、DMM.make AKIBAのプロデューサーを務める小笠原治氏。東京・秋葉原に設けた「DMM.make AKIBA」は新しいモノ作りの拠点として、世界中から注目を集めている。日本のモノ作りの未来や東京という都市の強みについて、小笠原氏が語る。聞き手はA.T.カーニー日本法人会長の梅澤高明(NeXTOKYOプロジェクト)、構成は宮本恵理子。

本日お邪魔したのは、東京・秋葉原にあるDMM.make AKIBA。スタートアップ支援事業の一環として、小笠原さんが1年半前に作ったクリエーターのアイデアをビジネスへと加速させるための場所です。総額5億円の機材がそろい、モノ作りの拠点としても話題になっています。
小笠原氏(以下、小笠原):ここのコンセプトは「作らない言い訳をなくす」ことです。やはりモノ作りには試作品を作るのにも、ある程度の設備が必要だし、手を動かすための場所も必要になる。お金の面では、1000万円くらいまではABBA LAbが試作段階で出資をします。技術面では、Cerevoという会社がお手伝いします。そんな仕組みでやっています。
ABBA Labは、小笠原さんと孫泰蔵さんが設立した、試作に対する投資に特化したスタートアップ支援の会社です。これまでの実績について教えてください。
小笠原:主にIoT(インターネット・オブ・シングス)の領域で、アクセラレーター(ベンチャーの成長を加速させる組織)として、1年間で10社に投資をしてきました。投資先の例を挙げると、3Dプリンターを使って筋電義手を作る「exiii(イクシー)」や、9軸センサーで着用者のモーションを記録できる“光る靴”の「nnf」、利用者の健康状態をモニタリングするトイレを開発した「SYMAX(サイマックス)」といったところです。
ほかにも、“俺の嫁”といったキャラクターで留守中の家を管理できるスマートホーム技術や、無線給電でバッテリー不要の農業用センサー、犬の感情が分かるエモーション検知技術など、これまで10社に投資をして、残っているのが8社です。
そして、そのうち3社が次のラウンドのファイナンスをしていて、2社で量産化が決っている。結果としてはなかなか悪くないでしょう。やはり皆さん、作りたいモノがあったんだなというのが実感です。モノ作りのアクセラレーターがこれまでいなかっただけで、それを支援する仕組みも世界にはたくさんいる。ただ日本には、そういった存在が一つもなかったんですね。

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