学校の校庭を地元に開放すると…

野球はできるだけ街中に球場を置き、誰でも入りやすい戦略で人気を巻き返しましたが、サッカーの競技場は都心から遠い。Jリーグは「遠くても年15回行く」というコアなファンに支えられているけれど、それだけではファン層は拡がりません。私もJリーグのアドバイザーとして、街なかスタジアムの重要性を説いています。

為末:僕が可能性を感じるのは「学校の校庭」です。各校にプールと体育館が付いている環境は、世界的にとても珍しい。日本の学校が週末に体育館やプール、校庭を開放したら、街中をスタジアム化できて、一気にスポーツ人口も増えるんじゃないでしょうか。学校だから住宅地域からのアクセスも抜群ですし。欲を言えば、近くにカフェでもつけられたらいいんですけど。

廃校施設をアスリート向けの合宿施設にするという「R.project」もそれに近い取り組みではないでしょうか。

為末:あれは宿泊施設としての利用になるんですが、やはりアスリートにとって「目の前にグラウンドとプールがある」という環境はすごく魅力的なんです。学校は水回りも完備していますし。ちなみにアスリートにとって「シャワーの水圧」は結構重要な要素だと個人的には思います(笑)。

 ということで、廃校を合宿施設にするというアイデアには当初から可能性を感じていたんですが、やってみて面白かったのは、実はインバウンドの利用が多かったということです。利用者の半数が、訪日外国人のバックパッカーで、ユースホステルと同じ感覚で使っている。これに近隣の住民の方々との交流を促進していくと、かなり面白い着地点になりそうだなと感じています。

訪日外国人を「ディープ・ジャパン」に引き込む

スポーツツーリズムの可能性もまだまだあると思いますか。

為末:数字の上がり具合を見ていると、地方での可能性はかなりあるんじゃないでしょうか。特に雪は大きな資源ですね。あと九州の地形はイタリアに似ているそうで、自転車乗りにとってはかなり魅力が高いそうです。

確かに山間部の道も隅々まで整備されているから、サイクリストが自然を楽しみながら走れる環境は整っていますね。富士山を見ながら走るツアーとか、もっと打ち出してもいいかもしれない。

為末:自転車競技って富裕層が多いんです。だから自転車ごと乗り入れられる宿泊施設なんかも、もっと充実させるといいでしょう。これまでインバウンドと言えば、都市での買い物とか、入り口に近い部分での効果ばかり言われてきました。けれど、これからはもっと日本の奥へ奥へと引き込む「ディープ・ジャパン」の戦略がものをいうんじゃないかと思います。

 五輪をきっかけに東京のファンになってくれた世界中の人たちを、日本の奥へ、深部へと引き込んでいけるといいですね。新しいものがギュッと凝縮されている東京から、2~3時間かけて行ける地方には、またそこにしかない自然のエンターテインメントがある。

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