21世紀は都市間競争の時代だ。2020年東京五輪に向けて都市の改造や再開発が進む中、東京が世界で最も魅力的な「グローバル都市TOKYO」に進化するにはどうすればいいのか。2020年以降を見据えて「TOKYO」の持続的発展と課題解決に向けた具体的な提言を続けてきた(詳細は「NeXTOKYO Project」参照)。
TOKYOの進化の方向性を、NeXTOKYOメンバーである各界のキーパーソンと語り、未来へのヒントを探る。今回は風営法の改正に尽力した弁護士の斎藤貴弘氏。風営法の改正によって、東京の「夜」の風景はどのように変わるのか。聞き手はA.T.カーニー日本法人会長の梅澤高明(NeXTOKYOプロジェクト)、構成は宮本恵理子。

斎藤さんはインタビュー前編で、ナイトカルチャーの経済的価値と文化的価値について説明されています(詳細は「『夜の市長』がナイトカルチャーを変える」)。ほかにはどんな価値がありますか。
斎藤:経済的価値と文化的価値に加えて、もう一つあると思うのが、社会的価値です。言い換えれば、人と人がリアルに出会ってコミュニケーションをする機会を創出するという価値です。今の時代に失われつつある地縁や血縁に代わる、緩やかなコミュニティーを生み出すきっかけが、夜という時間帯、クラブという空間にはあると思います。
クラブって、言ってしまえば「何もない箱」なんです。一方的なエンターテインメントが提供されるわけではなく、オープンな双方向性に本質がある。DJによる先進的な音楽が独特の地場を生み、そこにデザインやファッション、建築、飲食といった、その時代を牽引するさまざまな業界の人々が集まる。その結果、雑多な、でもその時代の空気を醸成するようなコミュニティーが生まれる。

モッズやパンクも元は音楽から生まれ、それがファッションにも広がり、文化的価値に加えて大きな経済的価値も生み出した。新しいものは大抵、最初はアングラだったり、サブカルだったりします。そういった文化の「芽」が生まれる場所としてクラブの環境は優れている、と。
斎藤:文化は小さいコミュニティーから育つものだと思います。その文化が大きな経済効果を生むように発展する過程を阻害するような規制があると、何も育たなくなる。改正前の風営法はそういうもので、「時代遅れの法律があったから、アングラで営業する」という状況をつくっていた。
そうすると、健全な資本が入らないから発展しません。仲間内の世界に縮こまってしまい、日本の武器になるような大きなコンテンツには成長しない。法律をきちんと現状に合った形に整えて、健全に運営しているところは、堂々と活躍してもらうようにした方が発展性があるはずです。
Powered by リゾーム?