エンタメの質は高いのに、それを楽しんでもらえないのはもったいない。いちいちホテルのコンシェルジュに頼まないといけないような状況では足も遠のきます。

伏谷 :全体的な戦略がもっとあっていいですよね。「爆買い」的なインバウンドばかりが注目されてきましたが、訪日外国人へのアプローチは潜在的顧客との接点になるわけですから。

 日本で体験して「これはいい」と思った人が、帰国した後に口コミをして、ビジネスに発展させて…と広がっていくはずです。インバウンドとアウトバウンドをセットで考えれば、大きなチャンスにつながると思うんです。

そのためにも、「体験の魅力」をより分かりやすく伝える工夫が必要ですね。記事制作ではどんな部分に工夫していますか。

伏谷 :先ほども言った通り、“DO”で提案することですね。その上で、「外国人視点に立つ」ことが重要になります。

 例えば札幌の地図を作った時は、同じラーメン店を紹介する記事でも日本語版では塩ラーメンを取り上げましたが、英語版では味噌ラーメンにしました。「札幌と言えば味噌ラーメン」という文脈が浸透する日本では塩ラーメンのほうが新しさを感じます。けれど外国人にとって新しさを感じるのはやはり、味噌ラーメンだと思うのです。

 こういう視点のヒントになるのは、やはり外国人とのコミュニケーションです。何を新しく、面白いと感じるのかを常に聞くようにしています。

「いつか東京に住みたい」と思える都市に

そういった細かな気配りを重ねていくことが、日本を世界に売り込む活動には必要なのでしょうね。政府は訪日外国人数年間2000万人という目標を掲げていますが、これはあっという間に達成するでしょう。最近、政府はどのくらい目標の上積みを目指すべきかと議論をしています。僕自身はフランス並みに年8000万人超を目指してもいいと思っています。

伏谷 :海外旅行を楽しむ人は、中国人だけでも年1億人いると聞きます。そう考えれば、まだまだ潜在力がある。一方で受け入れ体制は不十分ですから、整える必要がある。観光産業を本気で経済成長戦略と位置づけるならば、観光課だけがやるべき仕事ではありません。

観光業は経済成長の最大のドライバーになり得ると思っています。そのためには長期滞在しやすい環境も整えないといけない。日本を気に入った外国人が長く住み、日本の商材を世界に広める役割を担ってくれれば、クールジャパンなんて旗を振らなくても、勝手にエンジンが回るでしょう。

伏谷 :僕が若い頃、「いつかロンドンに住んでみたい」と思っていたように、世界中の若者が「いつか東京に住みたい」と思えるような都市になればいいですよね。

 海外メディアに対するPRももっとやったほうがいい。東京の書店で、『ブルータス』や『フィガロ』、『ポパイ』がずらりとニューヨーク特集を組む風景は珍しくないですよね。同じように、海外各誌がTOKYO特集を組むような風景を作りたい。外への発信も重要な課題だと思っています。