21世紀は都市間競争の時代だ。2020年東京五輪に向けて都市の改造や再開発が進む中、東京が世界で最も魅力的な「グローバル都市TOKYO」に進化するにはどうすればいいのか。2020年以降を見据えて「TOKYO」の持続的発展と課題解決に向けた具体的な提言を続けてきた(詳細は「NeXTOKYO Project」参照)。
TOKYOの進化の方向性を、NeXTOKYOメンバーである各界のキーパーソンと語り、 未来へのヒントを探る。今回はタイムアウト東京の代表取締役の伏谷博之氏。『タイムアウト東京』は、地域密着型のシティーガイドとして世界で定評があり、その東京版も訪日外国人に支持されている。同誌を発行する伏谷氏は、東京のどんな部分を訪日外国人が楽しんでいると感じているのか。聞き手はA.T.カーニー日本法人会長の梅澤高明(NeXTOKYOプロジェクト)、構成は宮本恵理子。

前編で、伏谷さんは日本に来る外国人にとって一番の楽しみは「体験」に尽きるとおっしゃいました(詳細は「外国人観光客を魅了する“DO”という観光資産」)。訪日外国人は、日本にどんな印象を抱いているのでしょうか。
伏谷 :ひと言で言うと「おとぎの国」です。3年前ぐらい前に『タイムアウト』のテルアビブのパブリッシャーが来日して1週間ほど東京に滞在したんですが、彼は「東京は妖精の国だ」と表現しました。明治期に日本に来て東京大学で教鞭を取った英国人、チェンバレンも同じように紹介していますね。
僕らはまったく自覚がないですが、例えば一般家庭の食卓に、大小のきれいな器が何種類も並んだり、着るものも細かいところに非常に気を使っていたりする。細部に心を行き届かせるところに、「妖精」を感じるようです。
当誌の創刊号でも紹介しましたが、バルセロナ在住のセサル・オルドネスという写真家が、東京の街で女性の足元だけ撮った写真シリーズがあるんです。足元だけなのに、すごくバリエーションがあって面白い。彼に「パリやニューヨークではやらないの」と聞いたら、「これは東京でしか成立しない」と言う。「海外は靴も似ているし、歩く歩幅もスピードも同じでつまらない。東京の女性たちは、それぞれに違うデザインの靴を楽しんでいて、ソックスにもこだわる。こんな都市はない」と。

似たような感想は、僕も度々耳にします。「ベルリン・スクール・オブ・クリエイティブ・リーダーシップ」というエグゼクティブMBAコースの参加者が、上海と東京を毎年訪れています。一橋大学ICSがホストする東京プログラムで、私はクールジャパン・セッションを担当していますが、世界のクリエーティブ産業のエリートたちが東京に来てまず驚くのは、消費者の異様なレベルの高さです。「上海は確かに勢いを感じるけれど、目に付くのは欧米のハイブランドばかり。一方の東京では、ほかの都市で見たことのないようなユニークなファッションの女性が街にたくさんいる。よく見ると、東京発のブランドと海外のハイブランドを自分なりのセンスでコーディネートしている。着こなしのアイデアの宝庫だ」と言うのです。まさに細部にこだわる妖精の国ですね。
伏谷 :昔も今も「黄金の国ジパング」なんでしょうね、きっと。音楽もそうですが、日本は外から取り入れたものをすごく深化させて、オリジナルを超越する部分がある。
外国人は「お好み焼き」をユニークと感じると説明しましたが、誌面では「お好み焼き」のほかにも「プリクラ」を紹介しています。海外でもセルフ写真が流行っているようだけれど、いやいや、日本のプリクラはすごいことになっていますよ、と。自分で撮った後のレタッチとデコレーションを普通の女の子たちが使いこなしていますから。
意外なものでは「サンバイザー」も紹介しました。海外ではファッションショー以外で見かけたりしませんが、日本では機能やデザインなどが日常使い向けに磨かれていて、普通に街中で見かけます。また、「アニメーション」では、デジタルを駆使して手書き感を出す技術が生まれています、というのも紹介しています。
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