21世紀は都市間競争の時代だ。2020年東京五輪に向けて都市の改造や再開発が進む中、東京が世界で最も魅力的な「グローバル都市TOKYO」に進化するにはどうすればいいのか。2020年以降を見据えて「TOKYO」の持続的発展と課題解決に向けた具体的な提言を続けてきた(詳細は「NeXTOKYO Project」参照)。
TOKYOの進化の方向性を、NeXTOKYOメンバーである各界のキーパーソンと語り、 未来へのヒントを探る。今回はタイムアウト東京の代表取締役の伏谷博之氏。『タイムアウト東京』は、地域密着型のシティーガイドとして世界で定評があり、その東京版も訪日外国人に支持されている。同誌を発行する伏谷氏は、東京のどんな部分を訪日外国人が楽しんでいると感じているのか。聞き手はA.T.カーニー日本法人会長の梅澤高明(NeXTOKYOプロジェクト)、構成は宮本恵理子。

『タイムアウト(Time Out)』と言えば、地域密着型のシティーガイドとして世界で定評あるメディアです。伏谷さんはその東京版を立ち上げ、訪日外国人の強い支持を集める媒体に発展しています。今回は、世界に向けた情報発信という目線で、国際都市としての東京の課題を探りたいと思います。まずは『タイムアウト東京』について簡単に説明していただけますか。
伏谷代表(以下、伏谷) :『タイムアウト』は1968年に英ロンドンで創刊されたシティーガイドです。
この頃のロンドンは音楽シーンが新しい動きを見せていた時期です。ビートルズが『ホワイト・アルバム』を出した年であり、翌年にはピンクフロイドやキングクリムゾンが台頭します。音楽が牽引する形で、変わりゆく街の風景を敏感に感じ取ったトニー・エリオットという若者が、同じく20代前半の仲間たちと新たなムーブメントとしての若者カルチャーをまとめたのが、『タイムアウト』の始まりです。
当時から「ローカルエキスパート」というコンセプトが重視されていました。つまりは“地元の目利き”。そこに暮らす情報通が集めた、ビビッドでフレッシュな情報を仲間に伝える感覚で、誌面づくりがなされてきました。
それが、「ありきたりのガイドよりも面白い」と評判を呼んで、海外ライセンシングビジネスに発展したんです。現在では世界108都市39カ国12カ国語で発行されています。非常にローカルな地域密着型メディアなのに、これだけの規模でグローバル展開されているというのは世界でも類を見ないと思います。

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