伸びる選手と伸び悩む選手はどこにあるのだろう。それを考え、突き詰めていく中で、たどり着いたのは「自ら考える力」の差でした。練習をただこなすのではなく、その意味を理解し、自らに何が足りないかを意識し、努力と工夫を自分事として重ねて行ける。そうした力が足りないままでは、どれほどの猛練習もなかなか血肉になっていきません。「何事にも考える力は大切」という知識は持っていたものの、では、選手たちがそれを身につけるために指導者として何をなすべきかというところまで掘り下げ切ることができず、ハードな練習に明け暮れていたわけです。

本当のピークはいつなのか

 私は「水の外」に答えを求めました。プールでの技術的な指導だけではなく、練習後にも選手とコミュニケーションを取り、質問を投げかけ、考える習慣をつけさせる。選手の親御さんたちには、水泳だけでなく、家庭でも自分で考えることを意識させてほしいと伝える。選手が通う学校の先生たちとも連絡を取り、水泳が大変だからと学校生活がないがしろにならないよう目を配ってほしいとお願いをする。

 それと同時に、選手それぞれのピークについて考えるようになりました。子供の頃から体が大きく、記録もいい。そんな選手は同年代の中で抜きん出てみえますが、考え方、考える力が未熟であれば、その強化の時間も必要です。あるいは、目前の結果を自信に変えて力を伸ばす選手もいれば、過信につながり成長を止めてしまうこともある。自力はあるがプレッシャーに弱い選手には、メンタル面での成長こそが必要です。

 指導者にとって必要なのは、その選手の心と体のバランスを考えながら、高みを目指すに十分な土台を作り、そこから一番高いところに手を届かせるべく全力を尽くすことだ――。

 現在の「チーム平井」の指導のベースには、当時の試行錯誤があります。

 中学生時代から指導してきた北島康介は高校3年生の時にシドニー五輪で4位に入賞しましたが、私は彼のピークが22~26歳ぐらいになればいいと考えていました。実際にアテネ五輪、北京五輪で金メダルを獲るわけですが、長期スパンでどう育成するかを考える中で、例えば中学・高校時代は、厳しい練習を重ねながらも、学校生活が疎かにならないように心がけました。

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