2020年に照準を合わせることが心身ともにふさわしい状態にある選手たちは問題ありません。しかし、例えば、急速に実力を伸ばして注目を集めつつも、本来は焦らず地力を蓄えるべき状態にある選手まで「とにかく2020年にメダルを獲らなければ」「そのためにはとにかく早く鍛えなければ」と最速最短で結果を出すことばかり考えるようになれば、その選手の本当の「ピーク」、すなわち「結果の最大値を出し得る時期」を逃してしまうことにもなりかねません。

足りないのは練習量?

 私には苦い記憶があります。

 かつて20代後半から約10年間、ジュニア世代の選手たちの指導に取り組んでいました。預かった多くの子供たちを少しでも速くするにはどうすればいいか、一人でも多く一日でも早く、どうやって一流選手に育てるか、365日そればかり考えていました。

 記録を向上させる。当初の私はそれが目指すべきことと考え、ハードな練習と技術指導に日々取り組む中から、文字通り「結果を出す」選手が続々と育ってきました。

 しかし一方で、伸び悩む選手も出てきます。当時の私は、そうした選手に対して、何の練習が足りないのか、もっとしっかり鍛えなければ、という気持ちで指導に当たっていました。その結果、記録が上がれば手応えを感じ、記録につながらなければ、また何の練習が足りないのかと考える。「学校の勉強より水泳が大事」とばかりに練習に没頭する選手にはその熱意を良しとして、指導を重ねていました。

 傍から見れば、熱心で結果も出す水泳コーチであったかもしれません。当時の自分も全力で指導しているつもりでした。しかし、今振り返れば、反省ばかりが浮かびます。

 厳しい練習の中から抜きん出てくる選手だけを見て満足していなかったか、記録が伸びなかった選手は本当にそれだけの実力だったのか、本当にそれぞれの選手と向き合えていたのか。

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