2020年に向けて、五輪で戦うチームをつくるにあたって大事な「今、やるべき準備」とは、選手たちの目的意識に凸凹がないようにすること。具体的には、チーム全員が「オリンピックで活躍するんだ、結果を出すんだ」という明確な意識を持ち、覚悟を固めることです。

 競泳の指導というと、より速く泳ぐためのメソッドを伝授することのように思われがちですが、それは最後の仕上げの話。まず何より大事なのは、土台を、覚悟を固めることです。

その「準備」は本物か

 才能はある、技術はある、結果も出ている。しかし、意識が定まらない…。そういう選手が「その先」に進むのは難しい。オリンピックという最高の舞台は、最高のプレッシャーを受ける舞台でもあります。「本来の力が発揮できたら、メダルに手が届く可能性も」とか「自己ベストが出れば、メダルもあり得る」とか、メディアでしばしば目にするフレーズですが、極限状態でたまたま最高のパフォーマンスができることに賭ける、というのは私の考える「準備」ではありません。

 この時期はウエートトレーニングで体をつくるとか、この時期にはたくさん泳ぐとか、この時期にこの大会に出て経験を積み、コンディションを上げていくとか、そういうセットアップはすごく重要で、そうして選手の地力を上げていくわけですが、1人で黙々と続けるのは容易ではありません。

 私の指導について「選手の個性を伸ばす」と評価いただくことがありますが、「半分正解」というところでしょうか。個々の選手それぞれに100%オーダーメードで指導しているわけではなく、まず、チーム全体でベースを上げていくことを重視します。高い目的意識を共有している選手が集まった練習は自ずと良い緊張感が生まれ、刺激し合い、全体をより高い土台の上に引き上げていきます。

 選手の意識を揃える。言葉にすると何だか地味で平凡で、簡単にできそうじゃないかと思われるかもしれません。しかし、これがなかなかに難しい。技術も気持ちも徐々に高めていけばいいんじゃないか。そんな声も聞こえてきそうですが、やはり覚悟が先なのです。その土台なしに付け焼刃の技術を積んでも、頂には届きません。

 リオ五輪400m個人メドレーで頂点を掴んだ萩野公介。リオ出場を逃した後、翌年の日本選手権で200m・400m個人メドレーを制し、世界選手権200m個人メドレーで銀メダルを獲得した大橋悠依。4月の日本選手権200m平泳ぎを制して、世界で戦う準備が整ってきた青木玲緒樹。

 スタート地点も状況も異なる選手たちですが、この時期にチーム平井の中核を成す彼らの意識が揃ったことには、確かな手応えを感じています。

 土台はできました。あとは自力を付け、自信を深め、覚悟を決めた選手たちが、その力を最大限に発揮して頂まで手が届くよう、「次の準備」に全力で取り組んでいきます。