2017年3月の競泳マドリード・オープンにて。 左から萩野公介、平井伯昌、青木玲緒樹、大橋悠依(写真:ムツ・カワモリ/アフロ)
2017年3月の競泳マドリード・オープンにて。 左から萩野公介、平井伯昌、青木玲緒樹、大橋悠依(写真:ムツ・カワモリ/アフロ)

 7月に入り、各地の屋外プールもオープン。太陽の下、水泳を楽しめる季節がやってきます。

 さて、ご報告が遅れましたが、新年度とともに平井レーシングチームも新体制となり、活動を続けています。リオデジャネイロ五輪競泳男子400メートル個人メドレー金メダリストの萩野公介は東洋大学を卒業。プロ転向を決め、ブリヂストンと5年間の契約を結びました。

 プロスイマーとしては北島康介という偉大な先達がいますので、学ぶべきことはしっかり学んでほしいと思います。しかし、ただただ「後を追う」だけになってほしくはありません。「プロとして泳ぐとはどういうことか」。その課題と正面から向き合い、萩野なりの答えを求め、覚悟を持って進んでいってほしいと思っています。

 なぜあえてそんな話をするのかと言えば、4月の日本選手権、世界選手権選考会での泳ぎに満足していないからです。昨年9月に右肘の手術をし、リカバリーの途上とはいえ、プロとして試合に臨むならば、周囲を納得させる準備とパフォーマンスと結果が求められます。

 金メダルを獲得したリオ五輪は1つの通過点に過ぎず、当然ながらリオと同じ実力では2020年の東京五輪では勝てません。北島がアテネ五輪に続いて北京五輪でも2つの金メダルを獲得できたのは、様々な壁が立ちはだかる中でも、常に金メダリストとしての自覚を持ち、私の助言に耳を傾けつつも、自分で考えることを丹念に重ねながら成長していった結果です。そして私は、進化を続ける北島に、その過程ごとに合うサポートとは何かを考え続け、指導に取り組んできました。選手だけ、コーチだけの成長ではなく、より高い次元での“掛け算”なしに五輪2連覇は難しかったと思います。

 2020年の地元開催という大きなプレッシャーの中で結果に残すには、萩野も私もさらに成長することが必要であり、その関係性も、より高い次元に引き上げることが不可欠です。これは萩野だけではなく、リオ五輪男子4×200mリレー銅メダリストの小堀勇氣をはじめ、現在、チーム平井でトレーニングを行う3人の社会人にも同じことが言えます。

 まずは今年7月23日からハンガリー・ブタベストで開催される世界水泳選手権で、プロとして、社会人として、その覚悟を示す泳ぎを期待しています。

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