証拠3:兆候がある

 兆候もいくつかある。まず、日米印の3か国の間で、機密の多い防衛関連の情報をシェアするための協定が結ばれている点だ。すでに米国とインドの間では協定が結ばれていた。日本も昨年12月、インドとの間に「日印防衛装備品・技術移転協定」及び「日印秘密軍事情報保護協定」を締結した。潜水艦探知網がとらえた情報を共有するための土台になるはずだ。

 また、日米はインド海軍の増強計画を支援している。これも潜水艦探知網とかかわる兆候の一つだ。今、インド海軍には大きく2つの注目すべき増強計画がある。一つは、マラッカ海峡近くにあるアンダマン・ニコバル諸島における基地建設。飛行場を拡張しており、インド本土から潜水艦対策の哨戒機が飛来するようになった。

 もう一つは、インドの東沿岸に位置するランビリ(Rambilli)における大規模な潜水艦基地建設計画だ。核ミサイル搭載型原潜をはじめ、インド海軍が保有する予定の多くの潜水艦を配備する予定だ。この基地は地下につくり、敵の人工衛星が潜水艦の出入りを探知できないようにする。敵の潜水艦が接近してくることが予想されるため、周辺には潜水艦探知用のセンサーを張り巡らす予定だ。

 日米両国は、インド海軍が進めるこの増強計画に協力している。アンダマン・ニコバル諸島の基地に飛来するインドの哨戒機は米国製の最新型P-8。インドは追加購入を検討中だ。米国はインドに、哨戒能力がある無人機ガーディアン22機も輸出しようとしている。最近、米国がインドに対しての武装した無人機を輸出することが容易になった。インドが6月末、ミサイル技術管理レジームの正式メンバーになったからだ。

 日本がインドに対して行うインフラ開発も関係している。アンダマン・ニコバル諸島にある飛行場のレーダー設備や、その動力源となる発電所、インド本土と同諸島をつなぐ海底光ケーブルなどの整備で、日本が支援を提供すると報じられている。海底光ケーブルは、潜水艦探知網と接続する可能性がある。

 ランビリの潜水艦基地建設計画についても、周辺に配備するセンサー網と、日米印3か国で構築しようとしている潜水艦探知センサー網を連結するかもしれない。

図2:インド軍の位置関係図
図2:インド軍の位置関係図

動き始めた日本のインド洋戦略

 このようにして見てみると、日米印3か国がインド洋で進める大規模な潜水艦探知網の構想は、ニーズがあり、前例があり、兆候がある。現実味のある話だ。どの政府も正式発表はしていないから、論文で指摘された通りのものになるとは限らない。でも、似たようなものが形成されると見てよいだろう。

 一見すると、日本の安全保障上、インド洋は遠い存在に見えるかもしれない。しかし、湾岸戦争後のペルシャ湾での機雷掃海、9.11後のインド洋給油、ソマリアの海賊対策、そして中国の「一帯一路」構想(インド洋が重要部分を占める)など、昨今、日本の安全保障において、インド洋で対処しなければならない問題が増えつつある。

 日本はすでに14年以上にわたって海上自衛隊の艦艇をインド洋に派遣している。今回の「海中の城壁」計画でも中心的な役割を果たす。インド洋で日本が果たすべき役割は何か。日本は、そのインド洋戦略を明確にする時期に来ている。

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