日本が核保有国になるかもしれない、といったイメージは、実際には日米関係に大きな影響を与えてきた。例えば1964年に中国が核実験を行ったとき、日本とインドは中国に対抗する核抑止について考えた。そして両国とも米国に「核の傘」を提供するよう求めた。「核の傘」とは、日本またはインドが核攻撃を受けたときは、米国が核兵器で報復してくれる約束である。

 米国の回答は、日本には「核の傘」を提供するが、インドには提供しないというものだった。それゆえ、日本は西ドイツと話し始めていた核兵器の共同開発を実行しなかった。一方のインドは、「核の傘」の提供をソ英仏からも断られた後、核兵器を独自開発する道を進むのである。

 なぜ米国は、日本には「核の傘」を提供し、インドには断ったのだろうか。もし米国が日本に「核の傘」を提供しなかったら、日本が独自に核兵器を保有する可能性があった。だから提供を決めたと考えられる。つまり日本が核兵器を保有するかもしれないというイメージが、日本への「核の傘」提供につながり、日米関係を強固にしている可能性があるのである。

日本の原子力技術が中国の背中を押す

 北朝鮮の核開発の問題にも、日本が核兵器を保有するかもしれないというイメージが影響を与えている。なぜ中国は北朝鮮の核兵器開発を抑えなければならないのだろうか。北朝鮮の核兵器は北京を攻撃するためのものではない。日本が米国の核兵器を脅威とは思わないように、中国も北朝鮮の核兵器を脅威と感じる必要はない。しかし、北朝鮮が核兵器を保有した後、韓国、台湾、日本が核兵器保有へ進む可能性を考えると、中国は北朝鮮の核兵器保有を懸念せざるを得ないのである。

 つまり、日本に原子力産業があることは、日本が米中などの国々との関係を強化する要因となっており、地域の安全保障全体に組み込まれた重要なパーツになっている。もしなくなれば、地域の安全保障のバランスは崩れるだろう。そして、今、日本の原子力産業の衰退によって、この懸念が現実味を帯び始めているのである。

インドの原発開発を日米豪で支援

 ではどうしたらいいだろうか。そこで昨今検討が進められている日米豪印(+仏)協力によるインフラ事業の一環として、民生用原子力協力を進める案を提案する。インドは今、大規模な原子力発電所を拡大する計画を進めているし、そこに日米仏も参入したいと考えている。

 だからすでに日印、米印、印仏の間で、原子力協定が結ばれている。日本がインドに原子力発電所を建造することになれば、日本の原子力産業を支えることになる。米国とフランスがインドに原子力発電所を建設する場合でも、日本製部品を使うから、日本の原子力産業にとって利益になる。オーストラリアはインドへウランを輸出しているから、この計画では重要な役割を果たす。
つまり、日米豪印(+仏)の組み合わせによる協力は、日本の原子力産業に生き残る道を与え、結果として、日本の安全保障の確保に貢献する可能性がある。

 本稿は、日本をめぐる安全保障の深刻化に伴い、日本の「核戦略」というタブーな議論に挑戦したものである。特にこの問題は、日米印を比較した場合に意識せざるを得なくなった。ぜひ日本でより深く議論され、手遅れになる前に、適切な決断がなされることを望むものである。