日米印連携のチャンスになる

 スリランカへの中古P-3C輸出が、日本の安全保障に大きな影響を与える可能性がある理由の第2は、この計画が日本だけでなく、米国とインドを巻き込んだ計画になるからだ。

 もともとP-3Cは、米国が開発した防衛装備品である。だから、日本がスリランカに中古機を輸出する場合は、米国の国務省と国防省の許可がいるはずだ。

 また、南アジアで何かする場合、南アジアに縄張り意識を持つ国の存在を忘れてはならない。インドだ。かつて日本がスリランカ内戦を和平に導く仲介役となったとき、インドは日本の意図を警戒した。スリランカへ防衛装備品を輸出する場合、当然、インドへの配慮が欠かせない(関連記事「動き出した「日本のインド洋戦略」)。

 だから、スリランカへの中古P-3C輸出は必然的に日米印3か国が協力する事例になる。良い意味でこの状況を利用すればいい。

 例えば、インド軍は対潜水艦用の哨戒機として米国製の哨戒機を使っている。米国はもちろん米国製の哨戒機である。日本は国産と米国製の哨戒機の2機種だ。だから、3か国と、同じ米国の系統の装備を利用している。情報の共有などが、やりやすいはずだ。だとすれば、スリランカに輸出した中古P-3Cが収集した情報を、日米印で共有するシステムを開発し、日米印・スリランカで海洋安全保障連携を積極的に進めることができるはずである。こうした連携で日米印の連携が深まれば、3か国のパワーは中国を圧倒する力をもつ可能性がある。

日本の防衛装備品輸出のカギになる

 さらに、スリランカへ中古P-3Cを輸出した後、他の国々への輸出が続く可能性がある。中古P-3Cの輸出は、日本にとって数少ない有利な取引だからだ。その理由は3つある。

 まず、中古であれば価格を抑えられる点だ。日本が開発する防衛装備品は価格が高い。例えば、インドと現在、輸出の交渉を進めているUS-2救難飛行艇は1機100億円といわれる。このような高額の防衛装備品を途上国に輸出しようとしても、当然、取引が成立しない。しかし、中古の装備品であれば、価格を抑えることができる。

 次に、十分な数がそろう点である。日本は過去、P-3C哨戒機を100機ほど保有し、現在でも66機保有している。しかもこれらの装備は更新期に入り始めており、日本は新しい国産のP-1哨戒機への切り替えを図っているところだ。だから、最終的には66機すべてが中古P-3Cとして輸出できる可能性がある。

日本はかつて、P-3Cをフィリピンに輸出することを検討したことがある。スリランカに6機輸出する案が実現すれば、他の国に輸出する前例となり、より多くの国との協力関係につながる可能性がある。

 最後に、中古P-3Cの輸出は、日本国内で政治的に問題になり難いことだ。防衛装備品の輸出は、日本にとって新しい分野。政府だけでなく国民も慣れていない。そのため、輸出した装備品が相手国の紛争で使用され人を殺傷する事件などが起きると、日本で問題視されるかもしれない。しかし、哨戒機は海洋監視に使用するもの。紛争に使われる可能性は他の装備品より低い。

カギを握る哨戒機輸出

 つまりスリランカに哨戒機を輸出する案は、中国の海洋進出に対する対策として有効。日米印との連携を促進するため太平洋・インド洋全域に及ぶ協力につながる可能性がある。さらに、日本の国内事情にも合致した、かなり可能性のある輸出案件である。積極的に進め、今後増えるであろう同種の取引の典型的事例にすることが期待される。

まずは会員登録(無料)

有料会員限定記事を月3本まで閲覧できるなど、
有料会員の一部サービスを利用できます。

※こちらのページで日経ビジネス電子版の「有料会員」と「登録会員(無料)」の違いも紹介しています。

※有料登録手続きをしない限り、無料で一部サービスを利用し続けられます。