海洋に対するインドの考え方の変化は、ナレンドラ・モディ政権下でさらに加速している。モディ首相の下で、インド海軍は世界の40カ国以上を訪問しているのだ(注1)。以前にはない活発な動きだ。訪問先は西から順に欧州、アフリカ、中東、インド洋の島嶼諸国、東南アジア、オーストラリア、日本そして米国と、インドから遠く離れた地域にまで及ぶ(図2)。

図2:モディ政権になってからインド海軍艦艇が訪問した国々(橙色)
図2:モディ政権になってからインド海軍艦艇が訪問した国々(橙色)
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 さらに、2016年に入ってから、インドは空母を外国に派遣するようになった。インドの新しい空母ヴィクラマディティアは、1月にスリランカを、2月にはモルディブを訪問している(関連記事:インドの新しい空母が持つ戦略的意味)。

 インド洋沿岸各国に対して、哨戒艦艇、航空機、レーダーを供与するとともに、要員の訓練も行っている。

 そして、昨年12月にインドの国防相が訪米した際には、中国が飛行場建設を進める南シナ海において、米印両海軍が共同パトロールを行うことについて話し合ったようだ(注2)。実施される可能性は現時点では低い。だが、検討している以上、選択肢の一つになっている。

 インドの国際観艦式は、このような情勢の中で開かれた。海洋の大国であることを世界に示そうという、インドの強い意志が込められているとみてよい。

(注1)長尾賢「活動範囲を拡大するインド海軍:日本にとっての意味」『勃興するインド-日印協力のアジェンダ-』(東京財団)2015年10月7日

(注2)Sanjeev Miglani , “Exclusive: U.S. and India consider joint patrols in South China Sea - U.S. official” (Reutor, 10 Feb 2016)

中国の影に危機感を募らせるインド

 インドがこうした動きを進める背景には何があるのか。やはり中国のインド洋進出が関係しているとみられる。インド海軍の艦艇が訪問した40カ国以上の国々を詳細に見てみると、日本、米国、オーストラリア、東南アジア諸国の大半を訪問しているにもかかわらず、中国を訪問していない。

 実は、モディ政権より前の政権は、インド海軍の艦艇に日本を訪問させる時には中国も訪問させていた。しかし、昨年10月に訪日したインド海軍の艦艇は日本、韓国、フィリピン、ベトナムは訪問したが、それだけでインドに帰ってしまった。

 今回の国際観艦式には中国も招待しているから、ある程度の配慮はしている。だが、前の政権に比べれば、モディ政権は明らかに中国を警戒しており、それがインド海軍の動きに反映されているとみられる。

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