拡大する潜水艦輸出競争

 現在、この潜水艦競争は、新たな段階に入り始めている。それは、輸出競争だ。中国に対抗しようとする中国の周辺国は、潜水艦を輸入して増強した。例えばベトナムはロシアから潜水艦を輸入し、訓練はインドに依頼している。

 これをみた中国は、インドの周辺国に潜水艦を輸出し始めた。具体的には、パキスタンへ8隻、バングラデシュに2隻の輸出を計画している。インドが海軍を動かす際に、周辺国の潜水艦がどこにいるかは、常に心配になる。中国としては、潜水艦を輸出することでインド海軍の動きを抑えることができる。中国は今後、パキスタンが原子力潜水艦を保有する計画も支援する可能性がある。

 このような動きに対して、インドは米国から対潜水艦用の哨戒機を輸入するなどして対抗している。インドはロシアからリースしている原子力潜水艦をもう1隻増やして、2隻体制にする予定だ。さらに国産原潜9隻も建造予定で、1隻目が就役に近づいている。潜水艦の輸出入は、競争激化する地域の防衛力近代化競争の象徴的存在になっている。

日本にとって鍵になる潜水艦外交

 ここからいえることは何か。まず、米国に比べ、他の国が潜水艦戦力を増強していることは、米国の存在感がそれだけ落ちていることを示している。第2に、潜水艦を増強していることは、国家間のパワーゲームが激化していること、特に中国と、その影響力拡大を懸念する国々との間で競争が高まり始めていることを示している。第3に、このような環境の中で、潜水艦輸出が外交カードとしてより影響力を増しつつあることも示している。

 こうしてみると、日本の存在は重要性を増している。日本は優れた潜水艦を保有する国であり、現在、潜水艦戦力を18隻から24隻へ増強している最中だ。そして、その潜水艦を友好国との協力増進のために使い始めている。具体的にはオーストラリアへの輸出を決めた(注:日本はオーストラリアから受注してはいない)。中国の急速な海軍力近代化に対抗して、日米豪で協力してパワーバランスを維持しようとする努力の一環だ。

 中国が潜水艦を増強する速度は速いことから、今後、日本は、友好国とのより緊密な協力が必要になる。そのためには、オーストラリアだけでなくインドや東南アジア各国に対しても、協力を促進する必要がある。具体的には、潜水艦や哨戒機、潜水艦探知用のソナーなどを含めた輸出、運用ノウハウの共有、潜水艦を使った共同訓練、情報共有などが挙げられるだろう。日本にはすぐれた戦力、人的・技術的基盤があるのだから、それを外交カードとしてどれだけ生かすことができるか、日本の政治力が問われている。

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