米国と中国はどうだろうか。図5はそれを表したものだ。意外なことに両国とも潜水艦を減らしている。米国は127隻から73隻へ、中国は94隻から70隻になっている。ただ、米中のデータには注意が必要だ。新しく増やした潜水艦の数に限って見ると、米国は11隻、中国は41隻で事情が大きく違う(図6)。もともとあった米中の大きな実力差は、年とともに縮まりつつある。実際、米海軍幹部は米下院軍事委員会で、中国海軍の潜水艦保有数は2015年2月の段階で米海軍を上回ったと報告している(注1)。

図5:米中の潜水艦保有数推移
参照: The International Institute for Strategic Studies, “The Military Balance”ほか、報道など。中国の2020年代の潜水艦保有数については不明。
図6:2000~2014年の各国の新規潜水艦配備数
参照: The International Institute for Strategic Studies, “The Military Balance”ほか、報道など
(注1)「中国の潜水艦保有数、米国を上回る=米海軍幹部」(ロイター、2015年2月26日)
※この報告では米国の潜水艦保有数は71隻になっている。

なぜ潜水艦?

 各国はなぜ潜水艦戦力を増強するのであろうか。潜水艦の特徴は少なくとも3つある。

 1つ目は、潜水艦が純粋に国家を相手にした軍事用の武器であることだ。人道支援や災害派遣では役に立たない。2つ目は、潜水艦は軍事用としてはコストパフォーマンスがよいことである。潜水艦は隠れ、敵を待ち伏せて戦う。敵の海軍は、潜水艦がどこにいるのかわからないので不安になる。不安になると、行動が慎重になる。つまり潜水艦は、隠れているだけで抑止力を発揮する。だから小さな海軍でも、潜水艦を保有していれば、大国の海軍にプレッシャーをかけることができる。

 3つ目は、潜水艦が相手国の軍事情報を収集する手段として有用なことだ。潜水艦は隠れて情報収集ができる。秘密の多い国際情勢の中で、正確な情報を把握するには、潜水艦による情報収集が有用だ。

 つまり、潜水艦を増強している国は、強大な国家を対象として抑止力を発揮すること、そして、情報収集を目的としていることになる。まず米海軍に対抗しようとして中国海軍は潜水艦を増強した。その潜水艦は、東シナ海、南シナ海、インド洋でまでも活発に活動するようになった。その結果、中国海軍に対抗しようとして、中国の周辺国も潜水艦を増強したのである。だから2000年代後半以降、中国の海洋進出が活発化すればするほど、各国の潜水艦保有計画にも拍車がかかり、ますます増加する傾向になっているのだ。