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民主党が米議会を奪還できないこれだけの理由

11月の中間選挙はどうなりそうですか。民主党が上院を奪還する可能性はあるのでしょうか。

高濱:ベテランの選挙予想専門家、数人(民主党系も含む)に聞いたところ、「民主党が、下院はもちろん、上院でも過半数を奪還するのは難しいだろう」と異口同音に指摘しています。理由は以下4つです。

<共和党は上下両院過半数の堅持に自信満々>

 第1は、中間選挙に臨む共和党指導部の意気込みと気迫です(無論その裏付けには後述するいくつかの客観的要素があるのですが……)。トランプ氏の大統領らしからぬ言動や支持率の低さ(30%台を低迷)にもかかわらず、トランプ大統領は「共和党大統領」です。共和党が8年ぶりに政権与党に返り咲いたのはトランプ大統領のお陰です。その大統領を支えるべく上下両院で過半数を死守しようとするのは当然です。

 それに比べて16年大統領選で敗れた民主党には、そうした覇気が感じられません。民主党は中間選挙戦を引っ張っていく「党首的リーダー」(民主党全国委員長にはトム・ペレス氏、上院にはチャック・シューマー、下院にはナンシー・ペロシ両院内総務がいますが、米国民はどの人物も「党首」とは見ていません)は現時点で現れていません。

 かって、金丸信(副総理、自民党副総裁、幹事長を歴任)という政治家がいました。党内では不人気だった総裁候補(少数派閥の領袖だった中曽根康弘氏)を「おんぼろ神輿」と言いながらも支持したことがあります。今の共和党幹部はトランプ大統領をまさに「おんぼろ神輿」と見ているのですね(笑)。それでも担ぐのです。

 景気、雇用、通商などの情況はオバマ政権の時よりも好転している。税制改革をはじめトランプ政権が推し進める経済・財政政策を共和党支持の富裕層は高く評価しています。少なくとも白人を中心とする共和党支持層は中間選挙でも共和党を支持するに決まっているという自信があるのですね。

<各州の州知事、州議会議員は共和党天下>

 各州の情況に目を向けると、共和党は知事の数(共和党34人、民主党15人、無党派1人)や、州議会議員の数(共和党56%、民主党43%、残りは無党派か第三政党)で大きくリードしています。共和党が過半数を占める州議会は67(民主党は32)です。

 中間選挙において、各州知事や州議会議員はまさに「足腰」の役割を果たす。彼らが提供する物心両面の支援が中間選挙での勝敗のカギを握ります。それに下院選挙区の区割りを決めるのは連邦政府ではなく州政府です。共和党に有利な区割りが定着してきたのは党の「地方パワー」のお陰です。

("Partisan composition of state houses," Ballotpedia. 12/9/2017)

<威力を発揮する共和党のゲリマンダー戦略>

 共和党は「地方パワー」を「武器」に過去十年の間に各州で「ゲリマンダー*」を進めてきました。つまり共和党は、選挙を有利に進めるために各州、特に南部や中西部で共和党支持層が特定の選挙区に集中するよう選挙区を割り、共和党候補が勝てる下地を作ってきたのです。顕著な具体例として、下院のメリーランド第3区、ペンシルバニア第7区、テキサス第33区などがあります。

*:ゲリマンダーとは、特定の政党や候補者に有利に働くよう選挙区の区割りをすること。1812年、マサチューセッツ州知事(のちに副大統領)のエルブリッジ・ジェリー氏(当時の「民主・共和党」)が与党に有利になるように選挙区の区割りを始めた。